＊キラキラ王子様＊ (ページ25)

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２５　☆side王子様☆ ページ25

息子から見ても、母は美しい人だった。

美しく、優しく、哀しい人だった。

夭逝した父を愛し続けて、父との思い出の中で生きていた。

その父には別に家庭があり、息子である俺の存在も知らないまま、父が死んだことは

幼いながらに理解していた。

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美しく、浮世離れした母にはいつも数人の男がおり

母と俺の生活は彼らからの援助で成り立つ、世間から後ろ指を指されるものだった。

母に心酔しきった男達が俺に冷たく当たることはなかったけれど、特に優しくもなかった。

１人を除いては。

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白髪交じりで、年齢は母より３０は上だったはず。

母を愛しているという訳ではなく、あまりに哀しく生きる母を

ほっておけない、という感じだった。

本当に愛している人は別にいるのだろう、と思っていた。

彼の母への、まるで娘を慈しむかのような愛情は母にも通じていたらしく

彼といる時だけ母は少し柔らかい表情をしていた。

その彼が、母と俺と３人で炬燵でお茶を飲んでいる時に心臓発作で亡くなり、

その出来事から１ヶ月後に母もまるで眠るように亡くなった。

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母の死が悲しくなかったわけじゃない。

それでも、もう母は愛する父のいない世界で寂しく生きる業から解放されたのだと思うと

哀しみよりも安堵が勝った。

俺が１２歳の出来事だ。

１２歳で唯一の身内を失った子供が行く先は決まっている。

一通りの家事も出来たし、義務教育さえ終われば自分の手で金を稼ぐことも出来るだろう。

数年間、居心地の悪い施設で過ごすことになるであろうことも

たいして危惧していなかった。

哀しみを常に見ていた俺は、いつも笑うことが出来たから。

笑うことでしか、母を慰めてあげれなかったから。

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そんな俺の前に現われたのが、今現在、祖母と母。と呼んでいる

愛すべき２人と、２人に手をひかれた幼いAだった。