＊キラキラ王子様＊ (ページ2)

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小さな古い平屋建て。

朝早くからお母さんが玄関を掃いて、お婆ちゃんが冬でも冷たい水で

ピカピカに廊下を拭く。

だから古いけれど、我が家はいつもピカピカだ。

磨きあげられた少し軋む床の音が、幼い頃から好きだった。

中学生になる頃から、朝のお味噌汁作りは私の仕事。

お母さん手作りのお味噌を使う。

二十歳を越えた今でも、仕事に行く前にお味噌汁を作る為に６時半に起きる。

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「男はね、胃袋で掴むもんなのよ」

お婆ちゃんはいつもピシっと着物を着て、白髪を綺麗に纏め上げてシャキシャキと一日中働いている。

歩いて１５分程度の小料理屋を５０年以上、女手１人で切り盛りしていて

今もバリバリの現役でかっこいい。

「胃袋だけ掴んでもねぇ･･･他所でもご飯貰ってたから困っちゃうわ」

お母さんはいつも微笑んでゆっくり言葉を紡ぐ。

白いブラウスにベージュのカーディガン。小さな不動産会社で事務として働きながら

趣味の裁縫と料理を楽しんで生きている、可愛い人。

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「女にモテたのよねぇ、いい男だから」

お母さんがズズ･･･とお茶を啜りながら笑う。

「そうそう。しょうがない。そんな男に惚れたんだから」

お婆ちゃんがお味噌汁を飲み干して笑う。

お婆ちゃんとお母さんはアハハ、と笑い、そうだ。田中さんちの前の花、見た？

綺麗だよねぇ、なんて名前の花だろう。だなんて話を続ける。

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世間でいう「嫁と姑」だけど、２人は本当の親子みたいに仲良しだ。

父親はいない。

私が２歳の時に、なんと「大雪の日に愛人宅から帰宅途中に雪で転んで頭を打って死んじゃった」人だ。

お母さんは「雪は大丈夫か？屋根の雪を降ろしに今から帰るだなんてさぁ･･･

そんなこと気にしないで京子さんとあったかい部屋で熱燗でも飲んでゆっくりしてりゃ

死ななかったのにねぇ･･･」

と笑い、いつも少し泣く。

京子さんというのは愛人の名前で、お母さんは京子さんと手を握り合って

お父さんを見送ったと、お母さんは懐かしそうに何度も私に話した。