最強ちゃみの千夜一夜絵巻

失った記憶の断片 ページ37

A「ぁ…ｯ！」



女御様に追い出され
あてもなくさ迷った



まだ宮殿の中なのか
もう外に出たのか
それすらもわからない



ただ誰もいない木々の中をひたすら歩き続けているうちに着物が何かに引っ掛かり足を挫いた



A「痛い…痛ぃ…ょ」



だけど挫いた足よりも
胸の方がずっと痛かった…



A「ﾕﾉ…ごめん…なさい…ｯ！」



ﾕﾉを利用しようとしたのは私の方



ﾁｬﾝﾐﾝを諦めなきゃいけないからと
傷ついたﾕﾉの傍にいなきゃと



自分の心を欺き続けた
それを女御様は見抜いたんだ…



ー話にならぬ…私にここまで言われ、侮辱されても何も反論もしない…ｯ！ー



もし私がこの時ﾕﾉへの愛を少しでも見せていたらきっとこんなことはしなかった…



女御様は自分のためじゃなく
ﾕﾉのために私を追い出した



愛されぬ辛さを誰よりも知ってるから…



A「どうして…だめなの…ｯ！」



もう戻れない



A「私が生まれたのはここじゃない…ｯ！ほんとは赤の他人なの…ｯ！ﾁｬﾝﾐﾝ…」



叫んでも無駄なのに



A「愛してるの…今も…ずっと先の未来でも…」



どこにいても
きっと私はﾁｬﾝﾐﾝを好きになる…



A「必ず見つけるって言ってくれたじゃない！私たちが出会ったのは運命だって！」



必ず見つける…？



無意識に出た言葉だった
だけど…抜け落ちた記憶の片隅に引っ掛かる言葉



思い出そうとしても
思い出せない



ﾋﾟｶ…ｯ！



突然目の前が光った
と同時に大きな雷鳴が辺りに響いた



A「雷…そうだ…あの時も雷が鳴った…」



誰かを待ってた
とっても大切な誰か



そしたら急に天気が変わって
雷が鳴った
雨も降りだして



怖くてその場を動けなくて
踞ってたら…



A「誰だっけ…」



同じように降りだした雨が着物に染み込み重みを増す



挫いた足を引きずって先に進むも段々雨の冷たさに体温が奪われていき、その場に留まった…



A「天罰…なのかな…」



目の前が霞み
意識が朦朧としていく



A「ﾁｬﾝﾐﾝ…だったらよかった…な…」



あの時待っていた相手がﾁｬﾝﾐﾝだったら…



A「会いたい…ﾁｬﾝﾐﾝ…兄妹で…も…いい…か…ら…」



ーA…ー



誰かが私の名を呼ぶ



ーA…ｯ！ー



声が大きくなる



薄れていく意識の中
誰かが駆け寄ってくる



「A？！」



ﾊｯｷﾘと聞こえた声にﾎｯとしてそのまま意識を失った

今の私と同じ→←愛するとは

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す