最強ちゃみの千夜一夜絵巻

長い一日の始まり ページ33

ﾕﾉ「会わぬ方が良かっただろう…」



ずっと止まらない涙を拭いながら問いかけるﾕﾉに素直に頷いた



ﾕﾉ「痕が…ついてしまったな…」



ﾁｬﾝﾐﾝが掴んでいた手首には、くっきりとﾁｬﾝﾐﾝの手の痕が残っていた



ﾕﾉ「痛かっただろう…」



それには首を横に振った


ｼﾞﾝｼﾞﾝと痛みが残る手首よりも
耳に未だ残るﾁｬﾝﾐﾝの声の方が痛かった…



ﾕﾉ「もう振り向くな…」



私の心を見透かしたﾕﾉが私を見つめる



ﾕﾉ「兄を想うてもどうにもならぬ…」



ﾕﾉの顔がゆっくりと近づく



ﾕﾉ「私だけを見ろ…」



さっきは重ならなかった唇が今度はぴったりと重なった



揺れる車に合わせ
角度を変えながらも離さない唇



もう何も阻むものはない



遠慮のなくなったﾕﾉの唇が
その手が合わせ目から入り
私の体を支配しようとする



もう拒めない



どんなに心でﾁｬﾝﾐﾝを求めても



ﾕﾉを受け入れるしかない…



「東宮様」



揺れていた車が止まった



「宮殿にお着きしました」



やっとﾕﾉが私から離れた



ﾕﾉ「着いてしまったか…」



さんざんその手と唇で堪能したのに
まだ物足りないような顔
乱れた私の衣を手際よく直すと最後に軽くｷｽをした



ﾕﾉ「まあいい…楽しみは今宵に取っておこう…」



先にﾕﾉが降りた



ﾕﾉ「おいで…」



と、手を差し伸べると
私を抱き上げるように車から降ろした



車は車寄せから既に宮殿の中に入っていた



「東宮様？！」



婆やと同じくらい年くらいの女房が驚いた様子で出てきた



「東宮様！どこにいらしてたのですか！」
ﾕﾉ「迎えに行っていた(ﾆｯｺﾘ)」
「東宮様自ら迎えに…ｯ」



ｷｯと睨み付けたその目に敵意を感じた



当然といえば当然だ
ここは女御様が住まう場所…
私のことを快く思わないのは当たり前…



「では、東宮様。この先は後宮のしきたりでございますので女御様への拝謁が終わるまで宮でお待ちくださいませ…」



さっきまで敵意剥き出しだったのが義務的に変わった



ﾕﾉ「しきたり…か。それは守らねば仕方ないなぁ…」



その言葉に安堵の表情の女房



「では…」



女房がﾕﾉに見えないように顎でこっちに来いと私を連れていこうとした



ﾕﾉ「私は見てるぞ」



女房が止まった



ﾕﾉ「Aに何かしたら私が黙っていない。よいな！」
「…」



振り向いてﾕﾉの顔を見た
「大丈夫」というかのように優しい表情で見送ってくれた

あの時と同じ→←その手を放して

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