最強ちゃみの千夜一夜絵巻

その手を放して ページ32

ﾁｬﾝﾐﾝ「ﾝ…誰かいるのか？」



ﾁｬﾝﾐﾝが起きた
咄嗟にその場にしゃがんだ



足音が窓に近づいて来る
声を押し殺す



ﾁｬﾝﾐﾝ「…んだよ。いねえじゃん」



足音が遠ざかって行くまで待った



A「何やってんだろ…」



ちゃんとさよなら言わなきゃならないのに…



A「動揺しちゃだめ…ｯ！」



余計なことは言わなくていい



「ﾕﾉのところへ行くの」
「さよなら」



これだけで十分…



表に回って格子戸越しに中を覗いた




A「あれ…？」



中は空っぽ
ﾁｬﾝﾐﾝの姿が見えない



A「どうして…？ﾁｬﾝﾐﾝ…ｯ！」



思わず格子戸にへばりつくように中を覗いた



…ｯ！？



中から伸びた手が私の手首を掴んだ



A「ﾁｬ…ﾐ…」
ﾁｬﾝﾐﾝ「…」



私の手首を掴んだまま離さない



無意識にその場を離れようと後退りしようとした私をそのまま強く引き寄せると格子戸越しにｷｽをした



やめて…ｯ！
放して…ｯ！



言葉にならずに格子戸を叩く



やっと離れた唇
でもその手は掴んだまま



ﾁｬﾝﾐﾝ「どこに行く…？」



放して…



ﾁｬﾝﾐﾝ「その召し物は俺がお前のことを思い選んだもの…ｯ！それを着てどこに行くのか聞いてる？！」



言葉の代わりに涙が出て来る



ﾁｬﾝﾐﾝ「待ってろって言ったろ？！俺と結婚するんだｯ！」



無理なの…ｯ！
首を横に振るしかなかった



ﾁｬﾝﾐﾝ「行かせない…ｯ！行かせるもんか？！出せ！早く俺をここから出せーｯ！」



掴まれた手首にまた別の手が重なった



A「ﾕ…ﾉ…」



驚いて力が緩んだﾁｬﾝﾐﾝの手をゆっくりと私から引き離すと格子戸から私を遠ざけた



ﾕﾉ「みっともない真似をするな」



ﾕﾉの瞳が冷たくﾁｬﾝﾐﾝを見据える



ﾁｬﾝﾐﾝ「みっともないだと？！汚い手を使いやがって！！」
ﾕﾉ「どんな手を使おうと選ぶのはA。Aはお前ではなく私を選んだのだ…」



ﾕﾉの顔が近づく



ﾁｬﾝﾐﾝ「やめろｯ！？」



唇は重なっていない
重なる寸前にﾕﾉは扇を開いてﾁｬﾝﾐﾝに見えないようにした



ﾕﾉ「こうなると思った…」



そう言って笑うﾕﾉ



A「ごめんなさい…ﾕﾉ…上手く言うつもりだった…ｯ！」



このままだとﾕﾉが悪者になってしまう…



ﾕﾉ「構わぬ。これでお前とずっと一緒にいられるなら…」


私の肩を抱いて歩き出す
背中越しにﾁｬﾝﾐﾝの声が聞こえる
屋敷を出てもずっと…

長い一日の始まり→←ここを降りたら…

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