最強ちゃみの千夜一夜絵巻

ここを降りたら… ページ31

A「ﾁｬﾝﾐﾝ…」



とうとうこの日がやって来た



今日私はﾕﾉの元へ行く
私の気持ちの整理がつくようにと待ってくれたﾕﾉ…



今日この日を迎えるまで会いに来たのは一度だけ
離宮に行く日が決まったことを自分の口で伝えに来た



ーﾁｬﾝﾐﾝに会うのか…ー
ーはい。宮殿に行く前に…ー
ーお前が本当は妹だったと伝えるのか？ー
ーいいえ…ﾕﾉの元へ行くことだけ伝えます…ー



「そうか…」と笑ってはくれたけど
会って欲しくないと目がそう言っていた



だけどこれだけは許して欲しい



何もかもが許されない間だけど
最後に会うことだけは…



牛車が止まった



「姫様、右大臣様のお屋敷に着きました」



着いた…とうとう…



ここを降りたらさよならを…



「姫様？」



ここを降りて



ﾁｬﾝﾐﾝに会ったら



永遠に



さよなら…



A「ｳｳ…ｯ！」



ｼｬ…ｯ



右大臣「A…」
A「ち…右大臣様…ｯ！」
右大臣「そのような顔では会えぬぞ…？」



袖でそっと涙を拭ってくれた



A「ごめんなさい…」
右大臣「ついていこうか？」
A「いいえ…ﾁｬﾝﾐﾝが中将様に怪しまれます…」



ﾊﾟﾊﾟ自ら私を車から降ろしてくれた



右大臣「よく似合ってる…やはりお前のことを思いながら選んだのだな…」
A「え？」
右大臣「私が今日の日のため、そなたに贈ったその召し物…中将に選ばせたんだ。もちろんそなたの話はしておらん。お前が贈りたいと思う人を考えて選べと…私がﾁｬﾝﾐﾝにしてやれるのはこれくらいだから…」



じゃあﾊﾟﾊﾟがくれたと思っていたこの唐衣たちはﾁｬﾝﾐﾝが見立ててくれたんだ…
これを着てﾕﾉの元へ行くんだね…



右大臣「それを着て中将の前に立てば、何も言わずともわかるだろう。今日が何の日か…」
A「はい…」



牛車を降りたら
まるでｱｶﾃﾞﾐｰ賞のﾚｯﾄﾞｶｰﾍﾟｯﾄのように敷物が敷かれていた
私の着物が汚れないように配慮してくれたんだ…



「この先に中将がいる」



ﾊﾟﾊﾟに言われた通り敷物の上を歩いて行くと
離れのような家が見えた



A「牢屋…？」



家のようだけど窓は格子のようなものがはめられていた


表に回る前に窓越しに中を覗いてみた



A「ﾁｬ…ｯ！」



思わず声が出て咄嗟に口を塞いだ



奧の方で窓に背を向けて眠るﾁｬﾝﾐﾝ
懐かしいその背中
私の愛しい人
そして私の兄と呼ばなきゃいけない人…

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