夏の約束

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庭先にバケツとロウソクを用意して、火をつけたらシュワーって音と、綺麗な色の火花が散った。

｢わぁーすごっ!!｣
｢けいちゃん暗いから転ばないようにね｣
｢はーい｣

心配されたのは昨日転んだって言ったせいかな…
はぁ、思い返すと色々とあった。なんだかこの花火がここでの一週間の締めくくりって感じだ。
あっという間だったな…

おじさんもおばさんも優しくて、釣りに連れてってくれたり、毎日美味しいもの沢山食べさせてくれた。
楽しかったなぁ

きらきらした花火を見つめながら色んな場面を思い出してた。
その大部分が、やっぱりあの子になっちゃう。



ヒューーパァンッ


｢おぉー綺麗〜！｣

頭上に丸く火花が飛ぶ。花火大会のとは違うけど、それでも綺麗で見とれた。
山ちゃんも、居たら良かったな…
一緒に見たかった


ふと見るとタヌキが軒下の物陰に移動してて、こっそり花火を見上げてた。
｢ほぁー｣って感じの声が聞こえそうな顔して。
あいつ花火見たの初めてかな…


『きれぇ…』
｢ほんとだねぇ｣


ん…？
いまのは…

暗闇に目を凝らしてもその姿は見えないけど
山ちゃんの声がした気がする。
よぉーく耳をすますとヒソヒソ声が聞こえた。

『かみさま、今日おれ頑張ったよ』
｢そーだね、ご苦労さま。ありがとね…｣
『もっと褒めて！』
｢花火、見ないの？｣
『かみさまっご褒美〜』
｢ふふっ、なんだよもぉ｣

｢わぁぁぁ！！タヌキいる！！たぬきー！！｣
｢たぬき？！｣
｢あら山から出てきたのかしら｣


しかもイチャついてます人んちの庭で！！！
こんな所でじゃれ合ってイチャついてんじゃねーよ！
俺だって山ちゃんに会いたいのに、一緒に花火見たかったのに…
全部、我慢してんのに……


｢……ずるいよ……｣

見せつけんな……ばか


なんでか泣きそうになってた。
いくら手紙で話しても、やっぱり会いたかった。
ここでの思い出はほとんど山ちゃんのことばかりで、お礼だって言いたいし、伝えたいことだってまだある。






いのちゃん

またあとで来るね。





｢…やまちゃん?｣




声だけ聞こえた。

またあとで。
いつもみたいに、会いに来てくれるって。



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