夏の約束

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庭をぼんやり眺めてたらおばさんが近所に出かけてたのか帰ってきた。
昨日と打って変わってからりと晴れた晴天の下で、庭木の向こうに麦わら帽子が覗いてた。


｢ただいまぁ｣
｢おかえりなさいおばさん…｣
｢あら、どーしたの慧ちゃん、元気ないわね｣
｢おばさん、おれ……生きてる？｣
｢え、生きてる…けど｣
｢そうですか…｣
はぁ。とため息をついて部屋の中へとぼとぼ戻る。
よかった生きてた。人間じゃなくなるってどうなるのか分かんなくて。半透明とかになってきたら大変だよ

｢け、慧ちゃん？疲れたら休まなきゃダメよ！｣
｢はぁい｣

心配されてしまった。確かに今の質問ヤバいかも。
机の上が終わってない問題集で埋まってた。
こんなん一日でできるわけねーし…現実逃避したい…



今日もほんとは遊びたかったなぁ
明日は帰んなきゃいけないし
ほんとに、もう会えないのかも。


また庭木の向こうに動く麦わら帽子が見えた。
おばさんまた出かけんのかな…さっき帰ってきたばっかりなのに。
帽子が左へすすすっと動いて、家の門扉の前に現れたのはおばさんじゃなかった。


｢……だれ？｣

知らない男の子だった。
しかも、すごい瓶底メガネをかけてる。なんだあいつ。
すごく挙動不審に家の中を覗き込んだり周りをキョロキョロ見回したり、怪しすぎる。
声をかけようとしたら、すうって息を吸うのが見えた。

｢あっ！あのぉう！！きのうたすけていただいたものですぅ！！｣

｢えっと、…い、…いもちゃん！！いますかぁ！｣


え……いも…いもちゃん？もしや、おれのこと？
てゆーか声でかい！！

｢バカ狸！！！声でかいよ！！！｣
｢あっ！ご、ごめんっ｣

やまちゃんだ!

｢やまちゃん！！｣
｢いのちゃん！じゃあ、あとよろしくね、ばいばい！｣

やまちゃんは俺を見るなり走って行っちゃった。
やっぱり…近付いちゃダメなんだ…。
避けられてるみたいでショックで、その場には俺と瓶底メガネだけが残されてしーんとした。

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