先生、私の気持ち気づいてよ…【名前変換オリジナル】

8話 辛い思い ページ10

でも一つ疑問に思う事がある

どうして、蓮さんの名前を知っているのだろうか

彼女には一度足りとも紹介や、もしくは顔なんてすら見ていない筈

何故蓮さんの事を知っているの…？


「え、楠先生って誰か分かるの？」


そう言う私の声に少し震えているのが分かる

抑えろ、今は自分の感情に乗っている場合じゃない

そう強く心の中で誓った


「先輩達にモテモテじゃん？だから朝、楠先生ーって呼んでたのが分かった訳よ」

「え、それってもしかして…」

「そ。うち一目惚れした」


胸にドンッと深く刻まれたように、鈍い痛みが走った

一目惚れ…確かに私もそれなのかもしれない

昨日初めて蓮さんの顔と、声を聞いて…まるで花を咲かせたような気分になって。

私、今の状況じゃあ夏希ちゃんと同じだ

…私、蓮さんの事が好きなのか

そう思うと何故か涙が溢れてきそうになってきた

この涙は何かは分からないが、今流しちゃダメな気がする


「そっ、か…頑張ってね…？」

「うん。頑張る！」


"頑張って"

無理矢理なように言った私の口からはこれしか言えない

私、なんて事してんだろ…

いや、抑蓮さんは元からモテていて性格も顔も抜群で、頭も良くてイケメンで。

こんな人をモテないなんて言うのは可笑しいし、何より極普通の私なんて見てくれる訳が無い

…自意識過剰にも程がある

私には今の言葉がピッタリだ

はぁ…と深い溜め息を吐いた途端

ガララッと音をたて、都合良く入ってきたのは…日焼けした少し黒っぽい肌に少し背の小さい先生

…この人が担任の先生なのだろうか


「よし。全員揃ってるな？んじゃ先生の自己紹介からな」


カッカッカッ、と白いチョークの固い音をたてながら黒板に書いていく


「後藤克紀だ。一年間お前らの担任となるからしっかりと覚えとけ」


教卓に両手をついて、ギロリと周りを睨むようにして見渡す先生

…何かSっぽい先生に当たってしまったような気が…

にしても、今頃蓮さんは自己紹介とかしてるのかな。そのクラスの人、羨ましいなあ

蓮さんの事ばかり、気持ちが先に行ってしまう

…でも、辛い。辛いよ


「今日は時間無い為帰宅となるが、明日は学年集会と自己紹介があるからな。明日までに考えとけよ」


規律、と言って号令をする

明日の自己紹介どうしよ…考えとかなきゃ。

と思った途端＿＿＿＿


「A、一緒に帰ろ」


私の名前を呼んだのは彼、でした

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