【アカギ】神出鬼没の。

二人 ページ35

川田組長との話のあと、石川さんに案内された別の部屋には誰もいなかった。

石川さんはただ

「藤沢組長が来るまでくつろいでくれ」

とだけ言い、どこかへ行ってしまった。


「……」
「……」

アカギさんと二人、六畳の和室に沈黙が続く。

カチンコチンに正座する私とは真逆、アカギさんは全く自由で、無防備に寝転びながらタバコを吸っていた。


私には気まずすぎる沈黙。

「ね、寝タバコは火事の元ですよっ…！」

訳の分からないことを言って顔を覗く。

するとアカギさんはタバコを口から離し、近くの灰皿でぐりぐりと火を消す。

「…す、素直なんですね」

意外にも素直。

「……ま、気分じゃなかったし…」

吸い込まれそうな瞳。
整った顔。
今更ながら見入ってしまう。

「…………近いよAさん」

アカギさんに言われハッとした。
寝転ぶアカギさんを覗き込む体勢、気づけば顔が随分近くなっていた。

「ごっ、ごめんなさ…！」

一気に鼓動が駆ける。

飛び退く私を見て、アカギさんも身体を起こす。


「青くなったり赤くなったり…忙しいねアンタ」
可笑しそうに笑う。

「だ、誰のせいだと思ってるんですか！」

「ま、…自業自得だな」

論破の嵐。
アカギさんには敵わない。
どうにも一枚上手。

「…ちょっと外に出てきます！」

意地を張ってしまった。
私が立ちあがろうと足に力を入れた時…


「わっっ！？」

ガクンと、バランスが崩れた。

足、痺れてる…！！


そのまま倒れこもうとしたが、…まずい。

「あぶなっ…！！」
「あ…？」

ドサッと倒れ込んだのは、アカギさんの上。

身体→←組長

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