千年恋歌【mackenyu】

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『終わりました』



厚めに巻かれた包帯を見てため息が出る。
それと同時に、普段の自分の運動のしなさと鈍臭さに心底呆れた。



「ありがとうございます…」


『少し腫れてるのであまり動かさない方がいいと思います』


「え、でもあたし家に帰らないと…」



いくら何でも、ここに泊まるわけにはいかない。
両親にドヤされあの逃げた子にも質問責めになる。



『…暗いですし危ないです。携帯は持ってますか？』


「…はい」



そっと携帯を取り出すと、アンテナは一本しか立っていなかった。
この山奥じゃ当然だと思う反面、これでこの人は生活してるんだと驚いた。



『それで友達のところに泊まるとメールしてください。電話じゃダメです』


「…いいんですか？ホントに」


『せざるを得ない状況です』



母親にラインを入れ、それ以降は返事が来ないよう電源を落とした。
今は縁側に座らせてもらってるのだがそこから移動しないといけない。



覗いている月が、とても綺麗だと思った。



『月、お好きですか？』


「あんまりちゃんと見たことが無くて…」



忙しなく動いていた彼は落ち着いたのか、あたしの隣に腰を下ろした。
座り方一つでも所作がしっかりしていて美しい。



『僕は外の世界を見たことがありません…』


「え？」



聞き間違いかと思った。

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