千年恋歌【mackenyu】

( 14 ) ページ14

だが。



見つかるわけもない。
そりゃそうだ、雨も降ってぐしゃぐしゃの地で携帯が無事に落ちていることの方がありえないんだ。



せめて晴れていたら…もう少し明るくて見つけやすかったかもしれないのに。



這いつくばって探してもあるのは葉っぱと枝とたまに虫くらいで、あたしの赤いカバーなどちっとも見えない。



イライラするわ泣きたくなるわ何だか生理中みたいな思考になってきた時、葉を掻き分けて歩いてくる音が聞こえてきた。
それが後ろからなのか前からなのかも分からない。



咄嗟に生えていた太い木の幹に身を隠し、息すらも抑える。



…どうやら歩いてくるのは一人みたい



『誰か、居るんでしょう？』



あっ…。



『分かってますよ。顔出して下さい』



その言葉に、ものすごく安心感を覚えた。



ｻﾞｯ…



『A……！？』


「は、はは…携帯落としちゃったみたいで…ごめんなさい…」



まっけんは昨日と違って綺麗な着物を着ていた。
やっぱりレイラと…って確信した。



『携帯なら…部屋にありましたよ』


「え、」



あたしがあまりに無情な顔をしたのか、ふは、と噴き出したまっけん。
そしてズンズンと近づいて…



『汚れてる。おいで』



昨日みたいに優しい顔で。
レイラがいるはずなのに、親だっているはずなのに。



こんな人と結婚できるなんて、レイラは幸せだね。

( 15 )→←( 13 )

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す