▷ ページ10
・
季節は移ろい、いつの間にか春になっていた。
同じ褥で寝ている宿儺がいないことに気づき、輝夜は飛び起きる。
完全に寝過ごしたのだ。
太陽は完全真上へと昇っていた。
急いで居間に行くと、宿儺がゆったりとしていた。
「起きたか」
「す、すみません……こんな時間まで寝てしまって」
「構わん。昨晩は少々無理をさせすぎたな」
その言葉を聞いて、輝夜は頬を少し赤らめた。
話し声が聞こえたのか台所から裏梅がやってくる。
「食事をご用意しますね」と言い、輝夜は遅めの朝餉をいただいた。
心地よい陽気午下。
縁側にて輝夜は宿儺と桜を見ながらゆっくり過ごしていた。
手に持っていた茶の中に桜の花びらが浮かぶ。
それを見て、彼女は趣があると思い笑った。
宿儺がそんな彼女の髪の毛に指を通す。
「花びらでもついていましたか?」
「いゃ、愛おしいと思っただけだ」
それを聞いて輝夜は宿儺から視線を逸らした。
照れているのである。
ふと、宿儺は何かを思い出し懐から小さな箱を取り出す。
その箱を輝夜に手渡す。
「開けても?」と輝夜が問うと、宿儺は頷いた。
そっと箱を開けると、美しい櫛と簪が入っていた。
「結婚してから何も贈ってないと思ってな。……気に入ったか?」
「はい。とても嬉しいです」
彼女の瞳からは心から喜んでいるとわかる。
それを見て宿儺は嬉しそうに笑った。
さっそく輝夜は貰った簪で髪を纏める。
「似合ってますか?」
「嗚呼」
それを聞いて彼女は笑った。
もう、孤独を帯びた彼女はどこにもいなかった。
彼女を孤独から救い上げたのは、非常に奔放で残忍な呪いの王だった。
〜
輝夜は家の周りの林で柴刈りをしていた。
あの事件以降、宿儺の強力な結界のおかげで呪霊が出ることはなかった。
こうして彼女が一人柴刈りが行えるほど安全になったのだ。
「あ、姫さまだ〜。お久しぶりです〜」
「あの時の?」
「そうですよ」
兎が輝夜に話しかける。
どうやらあの時遭遇した月兎のようだ。
しかし、今回はどうやら一羽だけではないらしい。
「わぁ姫さまだ!」
「こんにちは!」
「こんにちは!」
「こんにちは」
沢山の月兎が輝夜に集まってくる。
輝夜はこの光景を見て不思議に思った。
150人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミルクティー - 面白い!早く、新しい更新来ないかな〜 (3月31日 16時) (レス) @page21 id: 12753137d6 (このIDを非表示/違反報告)
MR サナリア(プロフ) - 新作キターーーー! 嬉しい〜! (3月24日 15時) (レス) @page5 id: bd9c6547a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:妃夏 | 作成日時:2024年3月24日 13時