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「人がいるから争いが起こるのだ。人より醜い生き物を見たことがない」
「……でも、羅刹様を処刑してしまった今、姫さまは……」
「構わないさ。それより。お前に頼みたいことがある」
私は髪に刺されていた簪を抜いた。
はらりと長い髪が垂れる。
宿儺様から貰った簪だ。
「姫さま…また、寂しそうな顔に戻ってしまいましたね。やはり愛する人との別れは辛いのですね」
「そうね。でもね、あの人の元に不老不死の薬を置いてきたの」
「はい?!残りの一つの不老不死の薬って姫さまが持っていらしたのですか?!」
月には二つ、不老不死の薬があった。
一つは私が飲み、もう一つは行方不明になっていたそうだ。
しかし、もう一つは私が持っていた。
そしてそれを宿儺様に置いてきた。
「生きていれば、また彼とは会えるかもしれない。だから私はあれを彼に託したんだ。……だが、記憶があるというのは辛いな」
私は簪をぎゅっ、と握りしめた。
そしてそれをハルに差し出す。
「私の地球での幸せだった時の記憶を詰めた。……地球の何処かに置いてきてはくれぬか。出来れば安全なところに」
「……良いのですか?」
私はその問いに静かに頷いた。
ハルは小さい手でそれを掴み、鞄に仕舞った。
「次、もし私が地球に行くことがあればどこに置いたか教えてくれ」
「姫さまが行く前に、僕死んでませんかね?」
「はは、子孫でも残して置き場所を伝えていけ」
「えぇ〜」
「嫌なら二千年ぐらい長生きしろ」
____もう彼女の記憶の中に、宿儺と過ごした記憶は残っていなかった。
ただ、簪になにか大切な記憶を詰めたことだけしか覚えていない。
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ミルクティー - 面白い!早く、新しい更新来ないかな〜 (3月31日 16時) (レス) @page21 id: 12753137d6 (このIDを非表示/違反報告)
MR サナリア(プロフ) - 新作キターーーー! 嬉しい〜! (3月24日 15時) (レス) @page5 id: bd9c6547a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:妃夏 | 作成日時:2024年3月24日 13時