例えば14 ページ16
「もう逃げ道はないんです」
そう言った彼女の声は重々しかった。
「あなたが助けることはできないんですか?」
俺よりも近くにいる人間の方が適任だろう。
俺は公安ではないし、もう潜入捜査をしているわけでもない。
「助ける? 私は……どちらにせよ、変わらないですよ。絶対にね」
「そう…ですか」
絶対というなら、なぜ俺に相談などしたんだ。
覚悟をしておけという合図か?
「私はね、その人が亡くなった世界が想像できないんですよ。それが悲しい。
なんで分からないんでしょう?」
「亡くなることが悲しいのではないんですか」
降谷君が消えることに反抗しようとはしないのだろうか。
それに千堂 怜音は安室 透のカノジョ役として潜入したというのに…。
そう思うと苛立ちが沸き起こる。
「なんで…なんでですか。
そこまで悩むのは親しい人なんでしょう?」
つい感情的に言ってしまった。
気づいて冷静になると、彼女は自分の手を見つめている。
「あなた……やはり、FBIの赤井さんですね」
「気づいてなかったのか?」
感情的になりすぎたのか、悩み=組織のことだと理解していなければできない返答があったか。
思い返してみれば後者だろう。
「気づいて…ましたよ。赤井さんなんじゃないかって疑ってるくらいのレベルでしたけど。
実際、今の答えが"赤井?誰だ?"となればそれまででした」
淡々とした口調に冷たさを感じる。
「そうか、返答を間違えたな…。
俺が赤井 秀一だと、降谷君に言うのか?」
「言う必要、あります?
本人が自力で気づかないと復讐にはならない」
目を合わせずに言うと、彼女は立ち上がった。
「赤井さん、さよなら…」
向けられた背はひどく小さく、どうしても追いかけることはできなかった。
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北雪(プロフ) - ユアンさん» 間違いが多くてお恥ずかしい限りです。ご指摘ありがとうございます。 (2017年2月13日 19時) (レス) id: 8c77ebf6ca (このIDを非表示/違反報告)
ユアン(プロフ) - 「さよなら」の「バイ」の英語はbyeですよ (2017年2月13日 17時) (レス) id: 6c76cbd4e3 (このIDを非表示/違反報告)
北雪(プロフ) - 零音さん» すみません。ご指摘ありがとうございます。 (2017年2月10日 18時) (レス) id: 8c77ebf6ca (このIDを非表示/違反報告)
零音(プロフ) - 風見と降谷がいるのは警視庁ではなく、警察庁ですよ。 (2017年2月10日 13時) (レス) id: 0fac29e216 (このIDを非表示/違反報告)
皇 - 続きが気になります!更新頑張ってください!! (2017年2月7日 23時) (レス) id: 00707a52c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:北雪 | 作成日時:2017年1月23日 17時