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てくてく私のところへ戻ってきた翔太は、今度は後ろからではなく前から引き寄せた。
あれ、この間もこんなことあったな、なんてやけに冷静な脳と、冷静ではいられない心臓は対照的だった。
「あーもーまた泣いてるし…」
悲しくはないのに、溢れ出す涙が止まらない。本当は怖かった。助けて欲しい、ってずっと思ってた。
だけど、守られているんじゃダメだって。きちんと隣に並びたいって、思ったんだ。
ガサツに目元を翔太の袖口で拭われる。
じい、と見つめてくるから、顔を背けたのに、私を引き寄せたその手で頬を捕まえられる。
『…やだ、見ないで。』
「だめ、見せて。」
捕まえられた頬はがっちりとホールドされていて、逃げ出せない。せめてもの抵抗として、目だけ逸らしておいた。
「震えてんじゃん。なんで無茶したんだよ。茉実みたいなやつ、絶対苦手じゃん。」
『…翔太のこと、ものって言ったり、飾りみたいに話すから、嫌だったの。悔しかったの。なんにも知らないくせに、って思っちゃったの…!』
私は、悔しかった。
初めから翔太と仲良くて、お似合いで、私が欲しいと思う立場にいるのに。
その座で胡座をかいて、自分のことしか考えていなかった彼女に腹が立ったのだ。
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杏奈(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったり...素敵な作品でした!何気ないセリフだけど「馬鹿だな、俺のことはいいんだよ」にひゃーとなりました笑!はつ恋は実らない。も読んでいたのでやっぱり作者様の表現好きだなと思いました。これからの作品も楽しみにしています! (2020年7月12日 22時) (レス) id: aadbdb729c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月叶 | 作成日時:2020年7月8日 0時