君を恋ふ (ページ3)

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『久しぶりお父さん、お母さん』

私の声だけが静かに響く

手を合わせて目を瞑ると

お母さんとお父さんが目の前にいる気がする

もう10年も経ったのに、昨日のことのように思い出して

堪え消えずに涙が溢れる

〝大丈夫〟っていつも励ましてくれた樹は

隣にいなくて、遠くに感じて

もうずっと離れ離れになりそうな気持ちに駆られた

『ひとりにしないで．．．』

涙交じりに出た言葉は

誰にも届かない、樹にも。

こんな顔で帰ったら樹心配する

気持ちに整理をつけるために

気分転換で2つ手前の駅で降りて

家まで歩いて帰ることにした

PLLLLL .....

ポケットが震えてスマホを見るとディスプレイには〝樹〟の文字

「遅ぇよ、今どこ？」

『ごめんご飯すぐ作るから待ってて！』

そう言うと電話越しで〝なんだ．．．〟って呟く声

「違ぇよ」

『なに、』

「．．．心配した」

心配性、樹はほんとに。

けどこの言葉を聞いたら安心する

胸があったかくなって、嬉しくなる

『すぐ帰るね』

そう行って電話を切って歩きだしてから気づいた

『あっ、２つ前で降りてたんだった．．．』

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