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「富松君、井戸に行ってくるからちょっと待ってて」

 できるだけ患部を清潔にするために、桶から手で水をすくい腫れている指にみずをかける。
 水分をふき取り包帯で止血を行い、少しでも冷やすために水で絞った布で指を包む。
 包帯が濡れるのは致し方ない。あとで取り換えればいい話だ。

 体温ですぐぬるくなってしまうの布を何度も新しく交換をする。

「あの、もう自分でできるんで……」
「そう? 痛みはどう?」
「まだ痛いですけど、大丈夫です」
「そう、包帯もう一度巻き直すから指かして」

 さっきあんなに痛がってたのに……、気丈にふるまう様子から、この子の大丈夫はどうも信用ならない。
 爪先は腫れているが出血はしてなさそうだから、あとは腫れが収まるのを待つしかないだろう。

「腫れてきたら私とか、保健の先生とかに伝えてね。私が信用ならないのなら、保健委員の三反田数馬くんに頼ればいい。骨折だったら早く処置したほうがいいから。なので、今日のところ、富松くんは委員会のお仕事お休みね。代わりにやっとくし吉野先生たちにもそう伝えておくから」

 富松君は唇をかみしめ眉間にしわを寄せながら目を伏せた。
 ちょっと言葉足らずだったかも。

「……富松君の仕事を取るわけじゃない。先生と相談しながらやっておくから。まだ物の場所だってわかっていないし。用具運ぶくらいはやっておくから今日は明日のために休みなさい」

 富松君は小さくうなずいたので、私は保健室を出た。吉野先生に報告しなくちゃ。
 そう思い、事務室に向かうと私は焦っていたのだろう。
 部屋に入った私を見て、何事かと目を丸くしていた。吉野先生に富松くんの事情を説明する。

「わかりました。私からほかの生徒や新野先生にも伝えておきましょう。Aさんは片付けをお願いします。修理する物品はいくつかあると思うのでそれは入り口にわかるようにおいてください」

「わかりました」

 吉野先生の机上には、まだ終わっていない資料などが山積みとなっていた。
 吉野先生の顔には目の下に紫の隈があり、手伝いましょうか、と声をかけたが断られてしまった。

 遠目で見えたのは、授業資料だけでなく天女について行ったと思われる上級生の情報も書かれていた。

 

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作者名:シャビ | 作成日時:2023年12月27日 23時

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