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蒸しタオルを忍たまの目にあてる。そして、部屋の畳に横になるよう促す。けれど、まだ作業を続けたいそうだ。では、交代して休んではどうかと伝えると先に一年生の忍たま二人が仮眠をとることになった。
どうやら、素直でいい子たちのようだ。
本当に疲れていたんだ……。そうしているうちに眠ってしまったのか、規則正しい呼吸音が聞こえるようになった……。 眠っているのを確認し、起こさないようにそっと手ぬぐいをはずす。
なんとも、気持ちよさそうな顔で寝ていたのでこちらも顔が緩んでしまいそう。
「あなたたちも、おいで。お名前はなんていうのかな」
「二年い組の川西 左近です」
「三年は組、三反田 数馬です上杉Aさんのことは孫兵からお聞きしています」
「孫兵くんから?」
「はい、優しい方だとおっしゃってました」
あら、数馬くんからあまり警戒されてなかったのは孫兵くんのおかげだったのかぁ。
もう一人の左近くんは、じっと私のことを見ていた。
「あの……すみませんが、数馬先輩」
次に、左近くんは私ではなく、数馬くんをじとりと見る。
「左近どうした?」
「なんで、数馬先輩はそんなににこにこしているんですか?」
左近くんの言葉に、数馬くんは笑顔で答える。だって、と言葉をつづけた。
私は気になり二人の会話に耳を傾けた。
「こんなに優しい事務員さんなんだよ。優しそうだし……」
「よくないですよ! この人が伊賀崎先輩をたぶらかしたかもしれないんですよ!?」
左近くんがものすごい勢いで私のほうを向くと、怒りの形相でにらんでくる。
そんな左近くんを止めるため数馬くんは彼の背中をたたいた。
「左近、いいすぎだよ。天女の鈴蘭さんと違って学園長先生の依頼で来られたんだ。それに三年生で確認したんだ。学園長先生の依頼というのも事実だ」
「それならいいですけど……すみません」
数馬くんが後輩の左近君をなだめていた。
「いいのよ、学園長先生からも天女さんのことは伺っているし、皆が疑心暗鬼になるのも仕方ないわね」
私はにっこり笑って、数馬くんたちにうどんのお盆を渡した。
左近くんは照れくさそうに頬を掻く。でも、やっぱりまだ警戒している様子だ。
「左近くん、疑ってくれても構わないよ。でも、私はここにいる皆と協力して学園のために頑張りたいと思っている。だから、何かあれば遠慮せずに話してね。信じてくれるかは君たち次第だし、疑うというのは、忍者に向いているね」
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作者名:シャビ | 作成日時:2023年12月27日 23時