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「あのー、事務員さんですか?」
その子供は私に対して敬語で話しかけてきた。
「えっ? あ、うんそうだよー」
事務員と言われ慣れてないものだから、声が裏返ってしまった。
「僕一年は組の皆本金吾です。今日は体育委員会で裏々山に来ていたんですけど色々あって……」
「はじめまして、上杉Aです。色々ってどんなこと? 」
「実は、次屋先輩がどこかへ走り去ってしまって、時友先輩と探しているんですけど見つからなくて」
「僕も体育委員会で、二年は組の時友四郎兵衛です」
「そうだったの。なら一緒に探しましょうか」
「本当ですか? あ、ありがとうございます」
金吾君は満面の笑みを浮かべる。
獲物はあとからでも見つかるだろう。おばちゃんも獲れたら、とおっしゃっていたしその言葉に甘えさせていただこう。
それよりも生徒の安全が第一優先だ。変な輩に絡まれていないといいけど……。
*
三人で次屋三之助君を探しに行けばすぐに見つかるかと思ったけれど、なかなか見つからないものだ。
「あっ! いた!」
金吾君が指をさした。なにやらこちらへ走ってくる。しかも野生のイノシシを引き連れて。
「次屋先輩! やっと見つけた! もう勝手に行動しないで下さい!」
金吾くんは安心した表情で、次屋くんに話しかけた。
「す、すまない……」
「金吾、危ない!!」
四郎兵衛くんが叫ぶ。
方向を変え、イノシシは金吾君の方に向かって突進してきた。私はすぐに金吾君の腕を掴み、抱き寄せながら受け身を取り、イノシシの猛進を間一髪のところで避ける。
あっぶなぁ、急に方向を変えてくるなんて……。
「大丈夫そう?」
「は、はい……」
金吾くんに怪我がないのを確認してからイノシシの方に向き直るや、にやりと笑ってみせる。
獲物が自分から来てくれなんて、好都合だ。
イノシシは牙を鳴らし威嚇している。どうやら怒らせちゃったみたい。
猪の頭蓋骨めがけて、手裏剣を2本放つ。手裏剣のひとつは猪の前足をかすめ、猪はバランスを崩した。
隙を逃さず、猪の鼻目掛けて踵を思い切りおろす。すると、猪は横に倒れピクリとも動かなくなった。無事に気絶したことを確認し私はすかさず、私は胸から忍び刀を取り、鞘から引き抜く。
猪には申し訳ないが、心臓をめがけて深く刀を押し込み、絶命させた。
あまり苦しませず、止め刺しができたと思い一息つく。イノシシの体からはいまだに赤い鮮血が土の上に流れる。
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作者名:シャビ | 作成日時:2023年12月27日 23時