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そのことに、Aは笑いながら、金平糖を渡したソウコと呼ばれる、くのたまの頭を撫でた。くのいち教室の 生徒たちは褒められることに慣れていないようで、頬を赤くしながら嬉しそうにしていた。
その姿にAは少しばかり寂しさを感じていた。
なぜなら、彼女達と自分を重ねていたからである。
(私にも同じ時期があったなぁ。周囲から褒られるのがとてもうれしかった。こうして、頭を撫でてくれるひとはいなかったけれど)
と子供時代を思い出していたら、こうして食事に異物を盛られ、暗殺されかけたことがあるなぁと、嫌な思い出も彼女の脳裏に蘇ってきたのだ。
そのことにAは無意識のうちに眉を歪め拳を強く握る。その仕草をみたユキたちは、怒らせたと勘違いしたのか、Aに恐る恐ると話しかけてくる。
その声を聞いたAは我に帰る。
すると、くのいち教室の少女らが
「Aさんって、おいくつなんですか? 若いですよね」
と聞いてきた。
Aはその質問に、思わず驚いてしまった。そして、年齢を言うべきか迷うが、彼女たちを信用することにした。嘘をつく必要はない。
「もう30歳よ」
と正直に答えると、三人の少女は驚きの声を上げる。
「見えないですねー!」とトモミは声を揃える。
「でも、三十路過ぎの女性にしては綺麗すぎますよね。肌も若々しいし」とユキは羨ましそうな声で言う。
トモミとおシゲはうんうんと相槌を打つ。
それを聞いていた他の少女も同意するように大きく首を縦に振る。
Aはくすっと笑う。
「嬉しいことを言ってくれるじゃない」
と微笑む。
「ご結婚はされてますかー?」
「結婚はしていないけど、息子が一人いるわ」
とAはさらっと言う。
それを聞いていたくのいち教室の生徒は興味津々といった様子である。が、
「こら! 次は裏山でのランニングでしょう? 急がないと遅刻しますよ!」
と山本シナの一喝で慌てて教室を出ていく。
その様子を見ていたAは苦笑いをしていた。
「すみません、Aさん。それにしても、あの芸事の腕は私も見習いたいところですね」
とシナ先生は言う。
Aは微笑みながらも、内心は焦りを覚えていた。
なぜなら、Aのことを探りに来ていたからだった。
(本業のくノ一になんて敵うわけもないのに)
Aは動揺を隠しながら、話に相槌をうつ。なんとか誤魔化せただろうかと話は終わった。
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作者名:シャビ | 作成日時:2023年12月27日 23時