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しかし、本当の意味をAはくのいち教室に教える。
「この殿方に送られた歌はね、あまり好きではないの。『いつまでも変わらないものが欲しい』と言っているのに。『あなたがいれば、何も要らない』なんて、矛盾よ。人間はいつか老いるのよ……なんて関係ないことを言ってしまったわね。兎も角、和歌を詠む教養があれば悪い男にも引っかからずに済むのよ」と補足する。
その言葉を聞いた少女たちは感心している。
「流石です! 私たちにはわかりませんでした」と。
「でも、Aさんはなぜそんなに詳しいんですか?」とユキが疑問をぶつけてきた。
「……長く生きているから色々あるのよ」と彼女は冗談めかしに言う。
実際、Aには現在も縁談の話が来る。Aの地位や財産を狙った政略的な話ばかりだったが。そのようなことを考えていると授業の終わりを告げる鐘が鳴る。
すると、Aは礼をして、立ち去ろうとしたとき、くのいち教室の少女の一人がAを呼び止め
た。そして、何かを差し出してきた。
「Aさん。これを受け取ってください」
と言って渡してくるのでAは受け取る。
その中身は金平糖だった。
「ありがとう。大切に食べるわ」
Aは貰った金平糖を一つ食べて顔色を変えた。Aは金平糖を舌の上で転がし、懐から懐紙を出し吐き出した。
「……痺れ薬が入っているわね。……誰の仕業かしら?」
懐紙をくしゃりと丸めて呟く。手を閉じたり開いたりして、痺れがないのかも確認をしていた。
Aにとって、この程度の痺れ薬は効果がなく意味のないものであった。
その光景を見た少女たちの顔色が一気に変わる。
反射的に叱られると思った少女たちは、Aが近づいて行くにつれ、恐怖で体が震えていた。
「……ごめんなさい!」
と頭を下げると
「……別に怒ってないから安心して」
とAは一瞬困ったような顔をして笑顔で返した。
「金平糖に痺れ薬を混ぜるなんて見事だわ。きっと、一から作ったのね。ただ、金平糖にいれるよりも餡子とかに混ぜるといいと思うわ。金平糖は甘みしかないから薬などの風味がわかりやすいからね」
とアドバイスをした。
助言をされると思っていなかった少女たちは驚いたのか、「え……あ、はい」と呆けた返事をする。
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作者名:シャビ | 作成日時:2023年12月27日 23時