6話-1 くノ一教室の演奏の段 三人称視点 ページ24
「なぜでしょうか、Aさん、全然引っかかりません!」
「やっぱりくノ一なのよ! 私たちの作った罠に引っかからないんなんて」
教室で井戸端会議をしているのは、くノ一教室のトモミ、ユキ、おシゲの三人である。
Aがここで生活をするようになってから数日が経っていた。
彼女がくノ一教室の罠に1回も引っかからなかったことを不思議に思っていた。
そのため、彼女たちは一度作戦会議を開くことにしたのであった。天女でないかを確かめるために。
しかし、どうしたものかと考え込んでいるうちに時間だけが過ぎていき、授業が始まってしまった。若い山本シナ先生と後ろに事務員の格好をした女性が入ってくる。
その女性は偶然にもAであった。
「Aさんは元くノ一ということで今日は私の授業の補助として来ていただきました」
先生の言葉にクラスがざわつく。
「今日の授業は芸事、琵琶の稽古をいたします。まずは音階を弾いて行きましょう」
と先生がいうと皆それぞれ琵琶を持ち、練習を始める。しかし、琵琶の音程は中々そろわずまるで室内には不協和音が生まれていた。
Aはというと、山本シナと何かを話していた。すると、山本シナ先生が静かにするよう鶴の一声を放った。
「今から、Aさんがお手本で引いてくださいます。みなさんよぉく聞いていてくださいね」
そういうと、Aが座りそして、指先が弦に触れる。
春はあけぼの ようよう 白くなりゆく山際
少し明かりて 紫だちたる雲の細くたなびきたる……
涼しげに歌うように紡がれる言葉と、力強く弾く姿にクラスのみんなは見惚れていた。
やがて演奏が終わると同時に拍手喝采が起こる。
「とても素晴らしかったわ。では、次は皆さんの番ですよ。順番にやってください。終わった方から休み時間は自由で結構です。では始めてください」
と、言い終わるとすぐに生徒達は我先にとばかりに、次々と弾いていく。しかし、その音色に先程のような響きはなかった。
その後、しばらく休憩となった。その間、質問タイムが設けられた。
生徒たちは思い思いにAに声をかけたりしていた。Aはその一つ一つに丁寧に答えていた。
「ここはこうして……そうそう上手」と、教える様子はとても教師らしく見えた。
9人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:シャビ | 作成日時:2023年12月27日 23時