アイツの背中 ９

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「知りたいってそれってもう恋の始まりやろ？」

俺の言葉に、
サンダル履いたヤスが俺を振り返った。


「そろそろ前に進まんとな。
Aちゃんももう心配ないと思うし」


そんなん言うてくる。


「心配なんか無用や。
アイツは俺が幸せにするから。
お前も幸せになれ」

軽口で返したら、
いつもみたいにくしゃあって笑う。


「うん。
オークラなら大丈夫や」

そう言うて、出てった。


綾子、良かったな。


ヤスならほんまに大事にしてくれる。


けど・・・


気がかりは一つ。


綾子の家は、ヤスのこと、
認めてくれるんかな・・・


俺らと同じ険しい道が待ってるような気がして。

それだけが怖い。









翌週になっても、
結局、高坂さんは俺の秘書のまま。

もう金曜や。

人の心って難しい。


身体の容量には限りがあるのに、
気持ちはそれを超えて大きいなってしまうもんやから。

高坂さんの中で、
長い間に、
俺への気持ちがこじれてもうて、
憎しみに変わってもうてるもん。


そういう相手と四六時中一緒てきついし、
Aも不安やろうなって思う。

もうキスしてきたり、
極端に距離が近くなる事はないねんけど。

壊れたハイヒール代は相変わらず受け取ってもらわれへん。

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