アイツの背中 ８

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「行こ。
俺もついてく」


綾子の手を無理に引っ張って、
ヤスの事務所まで歩いてく。

ガラス扉開けたら、
Aが俺に気付いて。


綾子の手を引いてんの見て、
ほんまに悲しい顔したから。

慌てて離す。


「ヤス、お祭り行けへん？」

図面に集中してたらしいヤスがやっとこっちを見た。


「お祭り？
行きたい。
けどまだこれが終われへんねん」

ちょうどええやん。


「綾子、手伝ってやったら？」

ぽんって背中押してやる。


「ああ、綾子先輩も来てたん？
浴衣着てる。
めっちゃ可愛いな」


ヤスが褒めたから。

綾子が真っ赤になった。


褒められ慣れてるはずやのにな。


綺麗やって言われることが多いから、
可愛い言われたんが嬉しいんかも。

ちゃうか。

ヤスに言われたからか。


ヤスは無意識に罪作りやな。


「A、浴衣着せてえや。
まずは部屋に帰ろ」


声かけたら、
Aが立ち上がった。


「ヤス、後で祭りでな」

言うたけど、
そのつもりは全然ない。


綾子と二人で行けばええのに。


ヤスは鈍感なんか、


「うん、どこで待ち合わせぇ？」

聞いてくる。


アホの子なん？


「後から電話する」


適当にごまかして、
Aを連れて、事務所を出て来た。



A、めっちゃいじけててさ。

口、きけへんねん。

やきもちして可愛い。









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