アイツの背中 １２

１０１ ページ25

「おはよお。
めっちゃええ部屋やったな。
お風呂も最高やったし」


「そやな。
お前の声、めっちゃでかいねん。
筒抜けやった」

忠義が余計な事言うもんだから。

綾子さんが真っ赤になった。


「えっ・・・」

一言、呟いたきり、
固まっちゃってる。


「そお？
別に普通の音量やけどなあ」

ヤスくんは意に介してなさそう。

ほんと、突き抜けてる。


どこに照れポイントがあるのかないのか、未だ不明。


「綾ちゃん、何食べたいぃ？
パン？ご飯？」

もう目の前のバイキングに夢中。


「な？ヤスも呼んでるやろ？
ちゃん付けで」

ヤスくんが、
綾子さんの事、
呼び捨てにしたり、
時々、ちゃん付けで呼んだりしてるのは、
私だって、気付いてましたとも。


「人は人、うちはうち」

そう返したら、
忠義が笑い出した。


珍しい沖縄料理の数々。


私のトレイにまで、
勝手にいろいろ乗せながら。

「それ、友達のおかんがめっちゃ言うてた」

そう言う。


「忠義のお母さんは言わないの？」


「あんま言われてないかなあ。
いや、たまには言われたかな」


忠義のお母さんが怒るところなんて、
想像出来ない。

生活感ないもん。


「優しそうだもんね」


「いや。
怒るとめっちゃ怖いで。
嘘ついたら、
針千本より怖かったわ。
家に入れてくれへんから、
庭の蔵の中で朝まで寝た事あるもん」


どんな悪い嘘をついたんだ。

今度、お母さんに聞いてみよう。


「針千本はかなり怖いよ。
蔵で朝までのがマシだよ」


トレイはいつの間にか山盛り。

１０２→←１００

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す