アイツの背中 １２

９８ ページ22

「なんで？
食べさしたるのに」


「もういい・・・」


意味もなく泣きたくなる。


「・・・恥ずかしがりやねんから」


私の肩に乗せてた顎を離して。


くるって、忠義の方、向かされる。


「おいで」


抱き上げられて、
忠義の隣に乗せられて、
ベッドほどあるおっきなソファの上で向かい合った。


「顔に食べたいて書いてる。
食いしん坊のAちゃん」

じいっと見てくるから。


「そんな事ない。
ちゃんつけて呼ばないで」

忠義にこう呼ばれるの、初めてで、
むずむずする。


「ええやん。
どう呼んでも俺の勝手やし。
お前かって、
子供扱いして、
たあ君、呼ぶ事あるやん」

「そうだけど・・・
前に、たあ君でもいいって、
忠義が自分で言ってたじゃん・・・」

「うん、別にええよ。
やから、俺もええやん。
な？
Aちゃん？」

ほっぺたにちゅって、してくる。

「ダメ」

「なんでやねん。
ケチィ」


また始まった。

忠義のケチって口癖が。


「ケチじゃありません」


「ケチやん。
ぶどう食べてるとこ見して？」

「いい。いらない」


断ってるのに、
唇を割って入ってきた、
甘い果実。


美味しい・・・


「うまそうに食べるな。
いっつも俺の前でも、
元気良くがっついてんのに、
なんで急に恥ずかしいん？」

９９→←９７

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す