アイツの背中 １２

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「蹴られずに済んで良かった」

忠義が大げさに胸をなでおろすふりしてたら。


砂浜の向こうの方から、

「おーいっ！！
何、いちゃついてんねん！
そろそろご飯やでぇ！」

ヤスくんがぴょんぴょん跳ねて、呼んでるのに気付いた。


「あいつ、新郎やんな？」

忠義がぷぷって笑ってる。


ヤスくんらしいんだよなあ。







食事が終わって、ホテルのバーで少し飲んで。


部屋に戻って思い出した。


スーツケースが少し開いてたから。


「忠義、ヤスくん、この部屋に呼んでたでしょ？
なんでなの？」

ベッドにぼすんて座りながら聞く。


「ああ、何でもない。何も」


あやしい。

すっごく。


スーツケースの他には、
ヤスくんがいた痕跡なし。


忠義が私の隣に来て、
肩引き寄せて、
すぐにキスしようとしてくる。

ごまかす気なの。

「教えてくれないなら、
キスはお預け」

ぷいってしてみる。


男同士の約束的な？

そういうのだったら、別に詮索はしないんだけど。


「そんな大した話ちゃうねんて。
聞いて呆れへん？」

「呆れるかどうかは、
話を聞いてから判断します」


ベッドの上に正座したら。

忠義も、向かい合うように、正座してる。


「あれ、渡してやってん。
あいつさ、持ってない言うから」

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