アイツの背中

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向かい合って座って、
とりあえず、
かけつけビールで乾杯。


女のコらしいカクテルとか飲んだ方がいいかな。

いや、今更かなって。

外、暑かったし、結局、飲みたいもの優先。


「お腹減ったやろ。
お前、昼、チーズケーキしか食べてないやん。
なんでも頼め」


知ってたのか。

なんだか、綾子さんのチーズケーキ食べてたら、
食欲減退していったんだよね。


こういうことは、私には珍しい。


オークラが色鮮やかなメニュー差し出してくる。

どれも美味しそ。


「うん。
明太スパ食べたい。
ジャガバターと、
揚げ出し豆腐も」


オークラがふって笑う。


「お前、ほんま食べるの好きやな」


私を見てる目がいつもよりずっと優しい。


どうしちゃったんだろう。


ドキドキするじゃん。

困るよ・・・


「ちょっと話あるねん」


やけに改まって言うし。

変なの。



店員さんが注文を取りに来た。


オークラが、
二人では食べ切れないであろう量の料理を注文してる。


そこに、ヤスくんから電話がかかってきた。



そそくさと席を立って、
店の廊下の一番奥で、電話に出る。


「Aちゃん、今どこ？
休日出動終わった？
俺、今、Aちゃんの会社の近くやねん」


ヤスくんの、明るいけど、ゆっくりとした優しいトーンの声って、癒されるんだよなあ。


「今ね、赤提灯っていう居酒屋さん。
すっごく揚げ出し豆腐が美味しいの」


「俺も行ってもええ？
誰かと一緒？」


屈託ない声で聞かれて、
断るのも変だよね。

だいたい、オークラとヤスくんは、
親友らしいし。


「オークラと仕事帰りに飲んでるだけ。
ヤスくんもおいでよ」


つい誘っちゃった。






席に戻ったら、オークラは憮然としてた。


さっきまでは、どっちかっていうと、
ご機嫌の部類だったのにな。

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