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灰かぶりが王子様の前に出ていくことが出来たのは、魔法使いに魔法をかけてもらったから。
この世界に魔法は存在しない。
どれだけ願っても、私の元に魔法使いが来ることは無い。
だけど、こんな私に魔法をかけるのは私自身なんだと思っている。
美姫「A、これ昨日借りてた昂輝くんのジャージ。乾いたから、今日返してあげてね」
『うん。…ありがとう、お姉ちゃん』
紙袋に入った彼のジャージを受け取って、お姉ちゃんにも感謝した。
お姉ちゃんは綺麗に微笑んで、頭を撫でてくる。
『なっ、』
美姫「可愛い。お姉ちゃんは、Aのこと大好きだよ？」
『子供扱いしないで！私高校生だよ！？』
美姫「それでも、Aはいつまでも可愛いままなの。世界でたった一人、大切で大事な妹なんだから」
雑に撫でてくるから、髪もぐしゃぐしゃ。
でもこんな風にされるの、嫌いじゃないかも。
『ふふ…』
美姫「Aは笑った顔の方が可愛いから、ちゃんと笑ってて。……よしっ、今日も元気にいってらっしゃい！」
『ほんとうるさい………いってきます』
ずっと劣等感を感じてたけど、本当は原因なんてお姉ちゃんには無くて。
多分、全部私のせい。お姉ちゃんが…お姉ちゃんは…って囚われてたのは私だけで、みんな実はそんなに気にしないのかもしれない。
『お、おはよう…！』
「……。おはよー、なんか灰田さん雰囲気違う？」
挨拶、返してくれた。
これが証拠。
「灰かぶりちゃん、懲りずに学校来たんだね〜」
関わりたくない人達だったけど、
『おはようございます。…衛藤くんに会いたくて来たんです』
「はぁ！？全然言ったこと聞いてないじゃん！私達言ったよね！？昂輝くんとあんたなんて全然…」
教室の扉から見える廊下に、衛藤くん達が見えた。
今来たんだ。昨日のこと謝った方がいい…のかな。
紙袋だけ持って教室を出ようとすると、なぜか阻まれた。
「ちょっと、まだ話は終わってな『邪魔！！！』えっ、な、なに！？」
怯んだ彼女達の間を抜けて、衛藤くんのとこまで走った。
シンデレラになりきれない灰かぶりを強くする魔法。
それはきっと、勇気と笑顔。
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作者名：宍戸 | 作成日時：2019年1月16日 19時
