飛ぶことをやめた日 2【白鳥沢】

歩み ページ45

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「ただいま………」




暗闇の中 腕を伸ばして壁を触ると、スイッチに触れた指で電気がついた。

玄関には2人分のスリッパが揃えられている。





今日は俺の方が帰りが早いのか。




適当に着替えて手を洗い、空腹を満たすものを探すために冷蔵庫を開けると、作り置きのタッパーがあったので取り出してみた。

皿を出し自分の食べる量だけ移して電子レンジに突っ込み、待っている間に風呂を沸かしに行く。




仕事帰りで疲れているというのに どうしても身体がテキパキと効率よく動こうとするのは、一種の職業病だったりするのだろうか。






「はぁ………」



ようやく食事の準備が整った頃には、もう限界だった。

気休めにテレビでも見ようとテーブルの上に置いてあったリモコンを手に取る。






【今日の特集は、バレーボール女子日本代表で、次期エースとして輝く成宮A選手！】




画面に映る彼女の姿を見た瞬間、脳が覚醒した。





【女優レベルの美しい顔、スタイルの良さから、ファンの間では "コートに舞い降りし天使" と呼ばれているそう。

しかし試合(プレー)では身長2メートルの巨人選手を相手にスパイクをし、ブロックまで決めてしまうほど超優秀な選手！


バレーボールのプロ選手として活動を続けるワケと共に、その素顔に迫ります！】









そういえば今日A特集の番組の放送日だったじゃん。
忙しすぎてすっかり忘れてしまっていた。


というか、番組冒頭から観られるとか運良すぎ。







【彼女の武器は何と言ってもジャンプ力と自由自在に操れる両手。
身長はバレーボール選手の中では低めだが、脅威のジャンプで最高到達点は日本代表でトップクラス！

そして、元々左利きだったところを矯正されたこともあり、なんと左右どちらも利き手だそうです】




【小学生の頃から、幼馴染の影響でバレーを始めた成宮選手。

昔は今とはだいぶ違うようで、当時を知るこの方からお話を聞くことに＿＿＿】



画面が切り替わった。

次に映し出されたのは、牛島さんだった。






「え゛っ！？牛島さんじゃん！！」



自分でも随分大きな声が出てびっくりした。






【幼い頃のAは、負けず嫌いでよく泣いてました。
試合では勝つまでやめないと駄々をこねていた時もありましたが、中学に上がる頃には落ち着いた様子を見せるようになりましたね】




珍しくカンペ丸読みではない彼を見て、俺は慌ててスマホを手に取った。





白布やばい、牛島さんがカンペなしで語ってる
川西お前牛島さんリスペクトしてんのか貶してるのかどっち??

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