背中の一番 ページ40
.
どうしよう、こんなの初めてだ。
「Aー！落ち着いていけー！」
タッチネットなんて初歩的なミスはしたことないし、なんなら失点したことなんて今までにない。
試合で自分のサーブがネットを越えなかったことなんて、一度もないのに……
ピーッと長めのホイッスルが鳴って、ハッとして顔を上げる。
白鳥沢の監督が、両手でTの形をつくって立っていた。
タイムアウトが入り、私たちは駆け足で監督たちの元に寄った。
「A」
『はい』
「他のメンバーと交代するか？」
チラリと横を見ると、控えている選手と目が合った。
確かに、私がミスをしてからチームの雰囲気が重くなっているのは間違いない。
このまま引き摺っていても、状況が悪くなるばかりかもしれない。
でも、コートから追い出されるのは嫌だ
私は勢いよく自分の両頬を叩いた。
バチンッと、思ったよりも大きな音が響き渡った。
「えっ！？」
周りのみんなが、驚いたように私を見る。
『監督、』
「なんだ」
『＿＿＿＿＿私に、もう一度サーブを打たせてください』
真っ直ぐ監督の目を見つめると、彼は静かに頷いた。
30秒のタイムアウトが終了し、私はボールを受け取ってラインから大きく離れた位置に立った。
『ふぅ………』
もっと、欲張れ。
勝利に貪欲になれ。
この中の誰よりも、自分が強いと証明してみせろ。
「さぁ、もう1本ナイッサー！」
得点板には9-12と表されている。
あと3点。サーブだけで、巻き返せるか。
ホイッスルが鳴る。
両手でボールを持ち、高く投げ上げる。
ステップを踏み、最後の1歩を大きく踏み込んで、左手で強くボールを打った。
「サービスエース！！！」
悪くないね、このまま巻き返せるぞ。
「いいぞA！この調子だ！！」
11-12
段々気分が高揚してきて、私は舌舐めずりをした。
「ノータッチエース！！！」
「やべぇよ、バケモンじゃねぇか！！」
そしてついに14-13と、サーブだけで4点も取ることができた。
15点目もいけると思ったが、流石に相手にレシーブされてしまったので、私は心の中で舌打ちをしながらコートの中に入った。
「ほんっと、手間かけさせやがって」
『すんませんねぇ』
「この先の流れをアンタに任せていいんだよね？」
後衛にいるセッターに手を差し出され、私は強めのハイタッチを返した。
『もちろんさ。好きなだけ私にボールを集めていいよ』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 255人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきや(プロフ) - ワカさん» 本編を最後までお読みいただき、ありがとうございました！喜んでいただけてとても嬉しいです！！ワカ様もどうぞお身体にお気をつけてください。 (4月6日 17時) (
レス) id: 0a45871910 (このIDを非表示/違反報告)
ワカ - 私もハイキュー大好きで、これ読んでたら自然に涙が流れて来ましたwでも、それくらいこの作品は魅力のある話だと思っています。今後共体に気おつけて頑張ってください！！この作品ではお疲れ様でした！(´；ω；｀)ｳｯ… (4月4日 17時) (レス) @page50 id: 98e979a673 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきや(プロフ) - 神無月さん» コメントありがとうございます！ハイキューは本当に奥が深い作品ですよね、！！同じ気持ちの人がいて嬉しいです (1月17日 21時) (レス) id: 0a45871910 (このIDを非表示/違反報告)
神無月 - 面白かったです！やっぱりハイキュー最高ですね！ (1月9日 16時) (レス) @page50 id: f275669b86 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきや(プロフ) - るれろさん» わかりにくくてすみません！ネタバレさせてしまって申し訳ないて゛す……。第一章からゆっくり楽しんでいただけると嬉しいです！！ (12月4日 17時) (レス) id: 270ca5dafb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきや | 作成日時：2023年11月11日 15時
