飛ぶことをやめた日 2【白鳥沢】

次期エース ページ28

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バレーは、ボールが落ちないかぎり試合が続く。






負けたくないのなら、コートに立ち続けていたいのなら




繋いで、繋いで、繋いで




ひたすら、上げればいい。







「A、そろそろ行くよ」



『……はい！』




インターハイ宮城県大会 決勝。

相手は全国常連の新山女子。向こうには、3年エースの天内さんがいる。



夏だということで体育館内はガンガンに冷房がきいていて、緊張と相まって鳥肌が立った。





ピーッ、と耳を突く鋭いホイッスル音が響き渡り、試合が始まった。



「氏原、ナイッサー！」



前衛にいる私は、後頭部を手に当てて守りながらネット前で待機した。

後ろからジャンプサーブが飛んでくる。向こう側のコートに落ちていったのを見て、私は腰を低くして構えた。



「オーライ！」


「よし上がった！叶香っ！」





新山女子は、試合最初のスパイカーとして天内さんを選ぶ傾向にある。

そして、彼女のいる位置はレフト。利き手は右。



飛び上がった彼女の利き手の前に、素早く移動してブロックを飛ぶ。





『すんません、ワンタッチです！』



正直私1人でも止められると思ったが、強豪校3年のエースなだけあって、強力なスパイクを完全に止めることはできなかった。



ネットの向こうにいる天内さんと、目が合う。

私は一瞬ニヤリと笑い、後ろに下がって助走を始めた。





「よし、いいぞ！」



少し乱れたはずのボールが、リベロのレシーブによって綺麗な弧を描いた。



セッターがレフトの方を一瞥したのを見て、新山のブロック要員が移動を始めた。




ライトにいる私とは目が合わなかった。


でもそれが、私にボールが上がる合図(・・・・・・・・・・・)。






ふわりと高いトスが、私の左手に向かう。


ブロック0枚。遮るものは、何もない。





「ナイスキーA！！」



ボールが床に叩きつけられた瞬間、歓声が沸き上がる。

ホイッスルが鳴り、本試合最初の得点は白鳥沢に入れられた。




「一発目からいいスパイクだね」


『ありがとうございます』



トスを上げてくれたセッターとハイタッチをする。





「それと例のサーブ(・・・・・)、ちゃんと覚えてる？」



『えぇ。欺くのは少し気が引けますが、向こうがどのような顔をするのか楽しみです』



「ははっ！性格悪ぃ〜」

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