巣立ち ページ27
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「本当は、お前に一桁の番号を与えようかと思っていたんだが。
ないとは思うが、それをきっかけにチーム内でいざこざが起きると面倒だから、とりあえず12番にしておいた。
その番号には深い意味はないと考えておけ」
練習後、私は一人だけで監督に呼び出された。
「お前はチームで唯一の2年だ。
しかし、コートに立てば全員同じ。学年で得点が変わるわけでもないし、試合の相手もお前の技術しか見ないだろう。
だからあまり気を負うな。
遠慮せず、思う存分バレーをしろ」
話が終わった頃には、もうすっかり日が暮れていた。
周りに人がいないことを確認し、私は街頭の下まで走って、バッグの中から先程貰ったユニフォームを取り出した。
『………私の、ユニフォーム』
頭の上から一点に照らしてくれる街頭が、私を輝かせるスポットライトのように思えた。
「そんなところで何してるの、Aちゃん」
誰もいないはずのところから突然声を掛けられて、身体がビクッと反応した。
音のする方を見ると、私服姿の彼がいた。
『及川さん……どうしてここに、?』
「謝りに来た。この前のこと」
『この前って、もう1年前の話ですよね』
いつもいるはずの岩泉さんがいない。今日は一人か。
彼はズボンに突っ込んでいた手を出し、私の前に立った。
『……正直、めっちゃムカつきました』
「………うん」
『けれど、それは " 逃げている " ことへの図星をつかれてたからだと思います。
何がしたいのか分からないまま、ずっと彷徨っている自分が情けなかったからです』
まぁ、マネージャーやってて後悔したことはないんですけどね。と付け足した。
『____でも今、やっぱり私は
ようやく気づきました』
「………っ!!」
『あの言葉がなければ、選手としてバレーに戻ることはなかったと思います。
ありがとうございます、及川さん』
見上げると、彼の瞳には薄い涙の膜が張られていた。
「………ほんっと、手のかかる生意気なやつ」
『そうですね。自分でも思います』
赤くなった鼻をすする彼に、まだ使っていないハンカチを渡した。
『じゃあ私、そろそろ帰りますね。
インハイ頑張るんで、応援お願いします!』
そう言って私は、12の数字が刻まれたユニフォームを及川さんに掲げた。
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ゆきや(プロフ) - ワカさん» 本編を最後までお読みいただき、ありがとうございました!喜んでいただけてとても嬉しいです!!ワカ様もどうぞお身体にお気をつけてください。 (4月6日 17時) (レス) id: 0a45871910 (このIDを非表示/違反報告)
ワカ - 私もハイキュー大好きで、これ読んでたら自然に涙が流れて来ましたwでも、それくらいこの作品は魅力のある話だと思っています。今後共体に気おつけて頑張ってください!!この作品ではお疲れ様でした!(´;ω;`)ウッ… (4月4日 17時) (レス) @page50 id: 98e979a673 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきや(プロフ) - 神無月さん» コメントありがとうございます!ハイキューは本当に奥が深い作品ですよね、!!同じ気持ちの人がいて嬉しいです (1月17日 21時) (レス) id: 0a45871910 (このIDを非表示/違反報告)
神無月 - 面白かったです!やっぱりハイキュー最高ですね! (1月9日 16時) (レス) @page50 id: f275669b86 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきや(プロフ) - るれろさん» わかりにくくてすみません!ネタバレさせてしまって申し訳ないて゛す……。第一章からゆっくり楽しんでいただけると嬉しいです!! (12月4日 17時) (レス) id: 270ca5dafb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきや | 作成日時:2023年11月11日 15時