【Y.Ryosuke】女子高生を養うアイドルの話 ２

▼51. ページ8

そして来たる今日。

朝から飛行機に乗ってやって来た東京は、とても暖かかった。もう春だもんね。

久しぶりの東京だけれど、ちっとも嬉しくない。

同じ地面に涼介さんも立っているのか、なんて気持ち悪いことしか考えられない。




「このまま荷物だけ置かせていただいてそれまで時間潰しておいてとの連絡がありましたので…」

『……んー、どっかカフェでも行こっか』




今ここにいるのは運転手さんとお手伝いさんの2人。

やはり三橋家の方は色々トラブルがあって忙しいらしく、顔合わせは夜になった。

こんなんで大丈夫なのか。うちが責任負わされることになるかもしれないよ。

…まあ私には関係の無いことだしどうでもいいけど。





『車じゃなくて歩きの方がいいかも。このデカい車じゃ駐車場探すのキツいし』




ほんとは時間潰すのなんて私一人で平気なんだけどさ、




「分かりました」




こうして彼女が私についているのは、私の見張りも兼ねているんだろう。

私がまた逃げ出すと思われているんだろうか。あのクソ兄貴に。

心の中で嫌味な兄の姿を思い出しムカムカしながらも綺麗なワンピースに身を包んだ私はお手伝いさんを隣に連れて歩き出した。









·









「混んでますね…」

『土曜日だしねぇ。札幌に比べたらどこも混んでるよ』




行き交う人々を見つめながら、のんびりと話す。

信号待ちしていた私は、やっぱ人多いなぁ、なんて呑気に考えていて。背後からの足音に気づかなかった。





「Aちゃん？」

『えっ？』





私の名前が呼ばれ、振り返った先。

そこには私の目線がほぼ変わらない小柄な男性と、逆にスラリと高身長の男性が並んでいた。




「…偶然」

『知念くん…！？』




マスクをしていても分かる彼の整った顔。

呆然と私を見つめる彼と、呆然と彼を見つめる私。

数秒か見つめ合っていた私たちに、もう1人の男性が「なに知念。知り合い？」と首を傾げた。

続く  (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう

←▼50.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す