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ロマンスの予感10 ページ41

「で、用ってなんだよ。」
「えっと……そのですね……」

どうしよう、急に話せと言われても、緊張で固まってしまう。
誰か、ヘルプミー!

「ったく、もういい。私が言うわ。渡したいものがあるから、仕事が終わったら一緒に帰ってほしいんだとさ。」

さすが紗奈ちゃん、すごい!!
この短時間で一緒に帰る口実を言えちゃうなんて!
私にはできないことを平然とやってのける。
そこにシビれるあこがr──

って、そんなこと言ってる場合じゃなかった。

「なんだよ、そんなことか。それならもっと早く言っとけよ。」
「ゴ、ゴメンナサイ……」
「陣平ちゃん、良かったじゃん!ようやくチョコ貰えて。」

松田さんってチョコ貰ってないの!
もしかしたら、もしかしたら、そうかもしれないんだよね!?





「す、すみません。待ちましたか?」
「いや、別に。」
仕事が終わったと思うと、上司の手伝いをやらされ、少し遅くなってから、松田さんが待っているところへ向かった。
松田さんは怒っては無さそうだったが、少し素っ気無い態度だった。

「渡したいものってそれか?」
松田さんは私が手に持っている紙袋を指しながら言った。

「は、はい……」
「どうしたんだよ。自信なさそうだな。」
「ちょ、ちょっと確認させてください!」
私は慌てながら紙袋の中を覗き込んだ。

こんなものを渡していいのだろうか。
一応マフラーではあるけれど……だいぶユルユルだし、糸を少し引っ張っただけで分解しそう……
だ、だ大丈夫!巻けばわかんないって!

私がずっと覗き込んでいたせいか、松田さんが私の方に近づき、私と同じように紙袋の中を覗き込んだ。
顔のすぐ横の松田さんの顔が、あまりにも近すぎて、袋の中を見られていることなど、どうでも良くなっていた。

綺麗な顔……
これは見惚れてしまっても仕方ない。
チラ見するつもりだったけど、気がつけばずっと松田さんの顔をガン見していた。
すると、松田さんも私の方を見てきた。

「中のマフラー取ってもいいか?」
「はい……もちろん。」
今の私の目はとろんとしていること間違いなしだろう。

松田さんはマフラーを手に取ると、ある一本の毛糸を触った。
その瞬間、私は我に返った。

「だ、だめです!その糸は──」
その言葉は意味もなく、手遅れだった。

「これ、どうなってんだよ……」
松田さんの顔は少し引きつっていた。

マフラーはただの毛糸と化していた。

「急いで作っちゃったから、すみません……」
「そういうことかよ。来年は頑張れよ。」

松田さんは、少し笑みを浮かべていた。
私の顔はケチャップよりも赤いに違いない。

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作者名:sena | 作成日時:2021年12月30日 0時

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