○あの頃の幸せ○ ページ35
「いくよ、A！」
「わー、おさむサッカー上手だねー！」
Aが笑ってボールを蹴ってる。俺はそれを横目で見ながら、ドリブルの練習を続けた。
砂木沼はお日さま園で唯一のサッカー経験者。ここに来る前、地元のサッカーチームに所属していたんだって。
「…俺だって」
置いてあるコーンを避けながらチラチラと彼女を見る。
でも、俺に背を向けてて…砂木沼と笑ってる。
…何で。
…何でだよ。
俺を見て、俺を見てよA。
「さすが私の息子だ。サッカーの素質がある」
「…父さん！」
悲しくて、必死にボールを蹴って走った。そしたら、父さんが笑って俺の頭を撫でてくれた。
嬉しかった。父さんが褒めてくれるから、俺は毎日練習した。絶対、砂木沼より上手くなって、Aにも見てもらえるように。
「ヒロトッ！俺とお前、どっちが速くドリブルできるか勝負しろ！」
「諦めるんだ晴矢、今日だってどうせ君が負けるよ」
「るせぇ風介、お前は黙って見とけよっ」
「…いいよ、勝負しよう。絶対勝つから」
俺は誰よりも強くなるって決めた。だから絶対負けないように練習した。
Aは俺と違って、ただ楽しそうにサッカーしてたけど、いつも俺を褒めてくれた、カッコいいって。
砂木沼にも勝てたような気がした。もうAを取られないように、俺はずっとAと一緒に練習したんだ。
毎日、練習の時は砂木沼よりも先にAをペアに誘った。やっと前みたいに戻れて、一緒に居られて…嬉しかった。
一緒にボールを蹴ると、いつもより時間が速く過ぎているみたいに楽しい。
「ヒロトに負けてられないっ、私も頑張らなきゃ！」
「一緒に練習して、頑張ろうね」
「うんっ」
…その頃は、楽しくて。
サッカーが、こんなにも苦しいと思ってなかったんだ。
「風介っ、こっちー！」
「よし…A！」
「Aっ、シュートは俺が決めるからな！」
「分かった！パス回すねっ」
笑ってられたら…幸せだったかな。
「…戻ろう」
破壊した建物に背を向け、俺は皆に声をかける。拾い上げたボールを見つめると、あの日の記憶が蘇ってきた。
あの頃に戻ることができたなら、どれだけ幸せだろう。
どれだけ過去を振り返っても…戻りたくても。
…俺は、前を向くことしかできない。
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輝(プロフ) - かなりさん» ありがとうございます！初めてランキング入りした思い入れの強い作品なので、そう言っていただけて嬉しいです(* ´ ▽ ` *) (2020年4月30日 23時) (
レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 私、この小説が大好きで最後の絵が上手でとても面白かったです！また読み返してみたいと思います！これからも体に気をつけて頑張って下さい！応援しています！ (2020年4月28日 15時) (レス) id: 698341d95b (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 真白さん» コメントありがとうございます(о´∀`о)完結できたのは皆様のお陰です。また新作も始めようと思ってますので、是非そちらも宜しくお願い致します(°▽°) (2017年4月3日 11時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 完結おめでとうございます!とても面白かったです!また作者様のイナズマイレブン（個人的にはまた風丸さんを）拝見できる日を楽しみにしています!本当にお疲れ様でした! (2017年4月2日 23時) (レス) id: f20ddfb271 (このIDを非表示/違反報告)
narumickey(プロフ) - お返事ありがとうございます！じゃあまた作品が出来た時に読みます(^^)これからも頑張って下さい(っ´ω`c) (2017年4月2日 18時) (レス) id: 985c8767ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2017年2月12日 12時
