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『…どうしたの?』
「え、いや?何でもない」
彼は視線をスモアに落としたが、
落ち着かない様子で私のことをチラチラと見てくる。
どこか不安そうな表情も見て取れて、
やはり取ってつけたような10時のおやつ作戦は、
上手くいってないのかもしれない。
「……Aは、もしかして、さ」
歯切れの悪い話し方に、耳を傾ける。
「僕と別れたい…って思ってる?」
時が止まった気がした。
喉に勢いよく息が入ってきて、
耳にヒュッと音が入る。
『……え?』
辛うじて出た困惑の声は掠れていた。
なんで、そんなこと。
「スモアって、マシュマロのお菓子だよね」
さっき私が言った言葉だ。
マシュマロのお菓子だよ、と紹介したことを思い出す。
だからといって、今、なんでその話をするの?
彼が分からない。
元々分からなかったけれど。
もしかして、最初から彼のことなど何も分かっていなかったのか。
「マシュマロって、"あなたが嫌い"って意味があるんだよ」
呆れたように、頬杖をついて私を見つめてくる君と、呆然と君を見つめる私の、目が合う。
血の気がサーーッと引いていく音が遠くで聴こえる。
『……そうなの?』
「うん。」
そんな、デリケートな話題を私が呼び込んだようなものじゃないか。
「だから、別れたいのを遠回しに言ってきているのかと思…」
『違うよ』
声が震える。
なんでそんなに平気そうなの?
私が、別れるという言葉に敏感になっているだけ?
普通の人はよしくんみたいな反応なの?
視線をあげて彼を見れば、
私のように動揺をする、というよりは
難解な問題に直面した時のような表情でいた。
眉間に皺を寄せて、私の思考を読み取ろうとしているようだ。
「違うの?」
『…誤解させるような物を出しちゃったのは申し訳ないけど、でも、違うよ』
伝われ。
彼を見つめる。
彼が目を逸らす。
その間、コンマ1秒。
「……ごめん」
ポツリと言い渡された言葉が
ひどく重く、心に伸し掛る。
何に対しての、謝罪なの?
『ううん、…いいよ』
それでも問い詰めることはできない。
そんなことを言い出すってことは、
よしくんの方こそ別れを望んでいるんじゃないの?
なんて、ね。
私は彼のことが好きだから、
答えが出てしまうようなことは聞きたくない。
怖くて視線を下げる。
自分の食べかけのスモアだけが目に入る。
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ぶっく。(プロフ) - どの作品も本当に素敵で、すべての話で心を動かされました!文章がとても綺麗……!最高の7名がそれぞれちがう時間を軸にした物語を展開されていて、本当にそれぞれちがう良さがありました。読んでいてとてもとても楽しかったです!ありがとうございました! (2020年4月8日 4時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 神作者の皆様、執筆お疲れ様でした!どれもこれも素敵な作品で、一つ更新される度に胸を躍らせていました。本当に素晴らしい作品を有難う御座いました…!! (2020年4月8日 0時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
還元(プロフ) - いろさん» 読んでいただきありがとうございます。この後もまだまだ素晴らしい作品が続きますので、どうぞ最後までお付き合いください!コメントもありがとうございました! (2020年4月4日 1時) (レス) id: 0ea79b5d61 (このIDを非表示/違反報告)
はるむにに(プロフ) - 神々の集まりですね、、本当すごいです(語彙力)次のお話も楽しみにしております! (2020年4月1日 22時) (レス) id: 33dd96b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - なんと…凄い神々が集まって作品をお造りになられたのですね、一話目から凄かったです。皆さんの見れるなんて…最高です。ありがとうございます。 (2020年4月1日 20時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:830 x他5人 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年3月29日 15時