1.ルクの受難(本編82ページの番外編) ページ9
濃厚な鉄の香りが充満している。
ウルドの部屋に立ち入ったルクは思わず口元を手で押さえた。
あまり血が欠乏していなくとも、こうして血の気配を感じると、欲望がせりあがって来る。
幸い、今のものは我慢できそうだが、我慢できそうにない時はウルドが寵愛する彼女ですら餌にしか見えなくなるものだ。
さて、どうしようか。
目的の人物は隣の部屋に居る気配がするのだが、この香りが物語るように、お取り込み中のようだ。
少しだけ物音も聞こえる。
流石にそこへ水を指すほど彼は野暮ではない。
人間のAならばいざ知らず、吸血鬼であるウルドならばこの部屋にルクが来ていることなどわかっていそうなものだが、ウルドが隣の部屋から出てくる様子すらない。
それが「待て」の意なのか、「帰れ」の意なのかわからない。
「うーん…どうしよう」
ルクが悩む間にも、あまり聞いてはいけないような音を耳が拾う。
布が擦れた音がしたと思ったら、Aのくぐもった声。
時々、うわ言のようにウルドを呼ぶ声がする。
血を飲む以外にも何かしら別のこともしているのだろう。
「うっわぁ…これ、俺が聞いてるの分かっててやってるでしょ…ウルド様も人が悪いなぁ」
人じゃなくて吸血鬼だけど。
呑気に時間を潰そうかなんて思っていたが、やめた。
こんなことをされながらずっとここに待機するなんて御免だ。
とりあえず、血でも飲んでこよう。
血の香りに当てられて、血への欲求が高まっている。それを抑えて、ウルドがAと戯れるのを止める頃合いにもう一度足を運んでみようか。
「あーあー…俺も自由にしていい家畜欲しいなぁ」
ウルドの場合は家畜の扱いでは無いにしろ、ルクにはあまりそれが理解できなかった。
吸血鬼としてはルクが正解だ。
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くれは(プロフ) - 完結おめでとうございます！ふと、ウルドが恋しいと思い戻ってきてこの作品を拝見しました。とても素敵な作品でした。この一言で終わらせるには勿体ないですが、ここら辺で…他の作品でお会いできたらな…と思います！ (2021年5月28日 19時) (
レス) id: 8383034622 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こんぺいとー | 作成日時：2020年7月11日 23時
