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どうやらこの色を彼は気に入ってくれたらしい。
魅入っているかのようにうっとりと見つめられ、恥ずかしさに少し目を細めた。
きっと頬も赤く上気している事だろう。
「でも、ウルドと同じ色が良かったです」
「私の色は与えてやったはずだが?」
「同じ色が手に入ると少し期待してましたから」
残念そうに眉を下げたA。
彼女はそのままゆるゆると頬を撫でられる感覚に身を委ねていたが、頬を擦り寄せて大好きな美しい赤を見上げた。
彼と同じ色になれるかと淡く期待をしていた分、少し落胆はした。
だが、これでウルドの隣で歩む悠久の時の流れを手に入れたのだ。嬉しくないはずがない。
愛しい吸血鬼の側で同じ吸血鬼として歩む。
これ以上の幸せがあろうか。
「これで永遠に一緒ですね」
「あぁ」
背伸びをして、少し高い位置にある薄い唇をそっと食む。
何度か小さく唇を動かし、されるがままになっているウルドの体を抱きしめ、名残惜しかったが一度唇を離した。
「それだけか?」
「え…」
「それだけなのか…?」
彼らしくないまるで遠回しにせがむような問いかけに、Aは困惑した。
再び寄せられる唇。
無遠慮に差し入れられる舌。
呼吸と呼吸との間隔が狭まり、ウルドに翻弄されることに、ただただ夢中になった。
舌を吸い上げられながら、薄く開いた視界で自身の口内を貪るように愛してくれる彼を見ると、今は止まっている心臓が脈打つような感覚がする。
伏せられた睫毛の間から覗く赤い瞳が美しい。
この赤が好きだ。
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くれは(プロフ) - 完結おめでとうございます!ふと、ウルドが恋しいと思い戻ってきてこの作品を拝見しました。とても素敵な作品でした。この一言で終わらせるには勿体ないですが、ここら辺で…他の作品でお会いできたらな…と思います! (2021年5月28日 19時) (レス) id: 8383034622 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2020年7月11日 23時