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差し出されたワイングラスを受け取り、その中に注がれている赤に目が奪われる。
いつも血を飲む時はウルドの首から直接だったが、今回はそれとは訳が違う。
目の前にあるのはウルドの物ではない、人間の血。
ごくり、と喉を鳴らした。
欲しい
欲しい
欲しい
この赤は吸血鬼が最も欲するもの。
この血への欲は止まらない。
この欲こそが自身がもう人間ではなく吸血鬼であることを証明していた。
ちらりとウルドを見れば、いつものように優しくで見守ってくれている。
少し安心した。
そっとグラスの縁へ唇を寄せ、赤を体へと迎え入れる。
ウルドの血とは別の味がするが、その味の美味しさはいまいち分からなかった。
それもそのはずだ。
Aはウルドの血しか口にしていない。比較対象があまりにも少な過ぎた。
グラスに残った血も全て飲み干した。
特に吸血鬼化したときと違って大きく何かが変化するわけでもなく。
静かに、静かに、瞳が赤く染まる。
こうしてA完全なる吸血鬼へと身を堕とした。
飲み干した空のワイングラスをAの手から絡め取るようにして奪ったウルドは二人の間を隔てる書斎机から回り込む。
愛しい彼女がその紅い瞳で見る初めての者はウルドでなければならない。そんな独占欲に突き動かされてウルドはAの隣へと移動した。
そして少しウルドよりも低い位置にあるAの顔を覗き込むと彼は嬉しそうに小さく笑った。
「お前の赤は少し薄いな」
「変でしたか」
「いや、私のものよりずっと良い」
顔にかかる髪をそっと退けて、黒手袋をした大きい手で輪郭にそっと触れた。
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くれは(プロフ) - 完結おめでとうございます!ふと、ウルドが恋しいと思い戻ってきてこの作品を拝見しました。とても素敵な作品でした。この一言で終わらせるには勿体ないですが、ここら辺で…他の作品でお会いできたらな…と思います! (2021年5月28日 19時) (レス) id: 8383034622 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2020年7月11日 23時