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彼は真祖___吸血鬼の親に捨てられた。
唯一の同位も失踪し、たった一人で先の見えない永遠を背負い、更にはその双肩に吸血鬼たちも背負った。
こうして出会う前の彼は千年近く計り知れない苦痛を味わい、苦労をしてきたことだろう。
それが少しでも和らぐならば共に居たい。
さらには、その苦痛も苦労も共に分け合いたいとさえ思うのだ。
ウルドは嫌うだろうが愛しい人が永遠を約束し続けてくれる限り、どんな場所でもどんなに辛くても生きていける。
彼の名を呼び首へ腕を回すと、ウルドは静かに視線を落としてきた。
星は好きだが、彼のこの瞳の色には叶わない。
唯一無二の燃えるような輝き。
それをAは愛している。
「明日も明後日も一ヶ月後も一年後も百年後も千年後もずっと一緒に、この空を見上げましょう」
「お前の言うとおりなら、星を見上げるのも悪くない。何千と時をかけてここに届く光をここでお前と見届ける。……仕方ないな。愛しいお前の永遠の誘いだ、受けてやろう」
ウルドはそう言って一つ、口づけを送ってくれた。
遥か昔、人間だった頃は冷たいと感じていた唇が今はもうそう感じない。
事故で彼の眷属となったが、これはこれでよかったのかもしれない。
きっと彼はAが吸血鬼にしろと迫った所で首を縦に降らなかったはず。
永遠、永劫、未来。
吸血鬼にとっては苦痛に満ちた言葉であってもAにとっては希望であり、大切な明日への約束。
ウルドがどう思っているかは定かではないが、きっと今の彼はこれを嫌っていないだろう。
都合のいいAだけの妄想ではないとそう感じさせてくれる日々の行動がある。
もし仮にそうだとしても、一人だけ死んでどこかに消えるなど許しはしない。
「ウルド」
「なんだ」
「…空ばかりじゃなくて私も見てください」
我ながらひどい我が儘だと思う。
空を一緒に見ようなんて言った側から、自分を見てと言う。
そんな我が儘を許してくれると知っているとついウルドを困らせたくなるのだ。
ルクや他の吸血鬼たちに抱く気持ちとは全く違う特別。ウルドへだけ向けた穏やかで、温かな特別な感情。
それは時折、嫉妬心となり可愛げが無くなってしまうのは唯一の反省点だ。
「そんな事を言わずとも、私の永遠はお前のものだ。いちいち焦るな」
「でも…！」
「…冗談だ。好きなだけ妬け」
そう言ってふと笑った彼は大好きな表情を浮かべていた。
満点の星空の下で永劫を約束する
終わり
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くれは(プロフ) - 完結おめでとうございます！ふと、ウルドが恋しいと思い戻ってきてこの作品を拝見しました。とても素敵な作品でした。この一言で終わらせるには勿体ないですが、ここら辺で…他の作品でお会いできたらな…と思います！ (2021年5月28日 19時) (
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作者名：こんぺいとー | 作成日時：2020年7月11日 23時
