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結局、タオルを体に巻き、ウルドと共に湯船に浸かることになったが、肌を露出したことで血の衝動に抗えなくなった彼によって大量の血を飲まれることとなる。
今は髪の毛の水気をウルドに拭き取ってもらいながら、ぼやんとしている。
血が足りてない。
「少し逆上せたか」
「ん…ウルドが血を飲んだから、らくらくらしてるだけで…」
湯船に浸かっていたからか、頬に添えられたウルドの手が珍しく温かい。人間みたいだ。
「悪かった。ここから飲め、足りないだろう」
「ん…ありがとう」
自身の牙で指を切り、ウルドはそのままAの唇に指を当てた。
傷口から供給される少量の血液を享受しながらウルドを見上げる。
彼は見つめられている事を特に何とも思っていないのか、その間に片手で器用にシャツのボタンを止めていく。
だいぶ頭が回るようになってきた。
ウルドの指が唇を離れ、一抹の寂しさを感じながらもAは間違ってもこの姿で抱きついたりはしてはならないと思った。
先ほど湯船の中でしていたことが思い出される。
鮮明に思い出しかけてやめた。
だめだ、恥ずかしすぎる。
一人で百面相をしてる所にウルドからばさり、と白い何かが頭めがけて投げられた。
頭にひっかかり、それを被っている状態になってしまう。
なんだろう。
そう思ってそれを手に取れば、いつも彼が身に付けている白シャツだ。
くしゃりと顔に寄せると、ウルドの香りがした。この優しい香りが好きだ。
「何をしてる、早くそれを着ろ」
「わっ」
頭に被ったままのシャツもろとも、ぐしゃりと髪をかき回される。
せっかく綺麗に乾かしてくれたと言うのに、ウルドのせいで乱れてしまった。
手櫛でなんとか髪を戻しながらAは受け取ったシャツをそっと触る。
確かに、着ていたネグリジェ以外の服を今は持ち合わせて居ないAにとっては着るものがない状態だ。
かといって、下着もなにも着ないまま、ウルドのシャツだけというのもあまりにも心許ない気がする。
透けてしまう可能性を考えてみても、得策とは言えなかった。
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くれは(プロフ) - 完結おめでとうございます!ふと、ウルドが恋しいと思い戻ってきてこの作品を拝見しました。とても素敵な作品でした。この一言で終わらせるには勿体ないですが、ここら辺で…他の作品でお会いできたらな…と思います! (2021年5月28日 19時) (レス) id: 8383034622 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2020年7月11日 23時