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「A、起きろ」
体を揺さぶられる感覚のせいで眠りを妨げられたAは、むくりとソファから体を起こした。
「いま帰った」
「お帰りなさい…私寝てましたか」
そっと手袋を外した手で頭を撫でられ、目を伏せる。
ウルドがこうして何かしらで拠点を空けることはあったが、さすがに今回は待ちくたびれてしまった。
夜になって眠る習慣が身に付いてるAにとって、ウルドが居ない時間を眠らずに待つといったことは難しかった様だ。
軽く目を覚まし、頭がハッキリしたところでウルドにお帰りなさいのキスを贈ろうとすると手で制される。
「土埃を落としてくる」
キョトンとするA。
相変わらず律儀だなと関心するが、そうじゃなかった。
改めて彼の姿をまじまじと観察する。
くすんだブロンドの髪と所々に滲む血の跡。
ジャケットには切れたような、擦ったような破れもある。
その姿を認め、だんだんと状況の理解が追い付くに連れて血の気が引いてきた。
あぁ、まずい、目眩もする。
くらり、と力が抜ける感覚が体を襲い、それにいち早く気づいたウルドがソファのクッションに沈む前に抱き止めてくれた。
珍しく焦っているような、そんな表情。
「どうした」
「ぁ……ちょっとびっくりしちゃいました…」
かちかちと震える彼女を前に、Aの真っ白なネグリジェを汚すことも厭わず、抱き止めた姿勢のままその小さな体を包み込むようにして大切に抱えた。
驚かせてしまったなんてそんな具合の話じゃないのはこの様子を見ればわかる。
なんて健気なのだろうか。
「け…ケガは、してませんかウルド」
「安心しろ。していない」
仮にしていても治るが、今のAに正直に答えた所で彼女の不安を助長するだけだ。
下手に不安がるような事を言いたくはない。
「この血の臭いは…他のものですか」
「そうだ。私は大丈夫だ」
「良かった…」
そう呟き、Aは破顔する。
次は所々破損の目立つジャケットが気になったのか、そっとジャケットの生地のほつれを見つけて指でなぞるような仕草を繰り返す。
汚れるからと止めさせれば彼女は眉を下げた。
「破れてる…」
「気にしてない。新しい物を使う」
どんなに大丈夫だと言った所で、Aの表情は晴れることなく、やはり心配をしている様子。
さて、どうしたものか。
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くれは(プロフ) - 完結おめでとうございます！ふと、ウルドが恋しいと思い戻ってきてこの作品を拝見しました。とても素敵な作品でした。この一言で終わらせるには勿体ないですが、ここら辺で…他の作品でお会いできたらな…と思います！ (2021年5月28日 19時) (
レス) id: 8383034622 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こんぺいとー | 作成日時：2020年7月11日 23時
