1.赤に染まった日 ページ1
「ここに居たのか、ずいぶん探した」
ワシリイ聖堂の二階、外から階段を上がってすぐの大窓から沈む夕日を眺めていたAの背後から近づくのは、ここを拠点として構えている吸血鬼。
第二位始祖ウルド・ギールス。
彼は吸血鬼としてのAの主であり、この耐え難い退屈な永遠を共にすると誓った存在でもある。
規則的な靴音が止まると、ふわりと後ろから抱きすくめられた。
「外が赤いな」
窓から注ぐ夕日を浴びてウルドのブロンドがオレンジに染まる。
振り返りもせず、Aはウルドの言葉に応じて頷いた。
この世で最も愛しい色に、今見ている世界は似ていた。だが、その色にはきっと他のものなど叶わない。
「お前は赤が好きだな」
「ウルドの色ですから」
「そうか」
ウルドが珍しく甘えるようにAの首筋に顔を埋めた。
この首筋からは彼女がウルドの血を飲み、眷属へと身を落としてもなお相変わらず甘美な血の香りは今もまだ健在だ。
魅惑の香りがウルドの鼻腔を擽る。
香りを漂わせる首筋に鼻を押し付けて堪能し、舌を這わせた。
以前のように体温を感じることは無かったが、ピクリとした反応が返ってきただけで十分だ。
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くれは(プロフ) - 完結おめでとうございます!ふと、ウルドが恋しいと思い戻ってきてこの作品を拝見しました。とても素敵な作品でした。この一言で終わらせるには勿体ないですが、ここら辺で…他の作品でお会いできたらな…と思います! (2021年5月28日 19時) (レス) id: 8383034622 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2020年7月11日 23時