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人の往来の流れをふと見ればこのロシアでは珍しい菖蒲の色。
間違い無かった。
あの雨が降る夜に見た少女と同じ色だ。
男は反射的に少女の消えた方へと走る。
何故、間違いなくあの日斬り伏せた相手が再び目の前に現れたのか不思議でならない。
あの日確かにこの手で斬ったのだ。
本当に彼女は人なのだろうか。
その正体に疑問を持たざるをえない。
吸血鬼には人間に紛れて行動する日中の制約がある。
人間の速さにしては少し速いくらいでしか走れない昼間は本当に煩わしい。
とても勝手が悪いどころか、今は目的の人物を見失いそうである。
仕方なく一度裏路地に入り、人目につかない場所で男は軽々と屋根に飛び乗る。
そこからは屋根を渡って上からあの特徴的な色を持つ少女を探した。
少し走った所で街の中にぽつんとある小さな公園のベンチに腰掛ける少女の姿がある。
おそらくあれだ。
人間のふりをして近づくか。
人目もあり、今日は変に周囲に怪しまれるような動きができないと思うとこれが一番の得策のように思った。
静かに近づくと、彼女はサンドウィッチを食べていた。街で買ったのだろうか。
二、三個ほどまとめて箱に詰められたサンドウィッチが手元にあり、丁度二つ目へと手を伸ばしたところだった。
人間なら美味しそうといった味を想像した上での感想が浮かぶ所なのだが、吸血鬼の男は何の感動も抱かず、彼女の行動を見つめる。
最後のサンドウィッチに手を付けた頃に急ぎ屋根から降り、近づけば彼女は不思議そうにこちらを見ていた。
「ずっと女の子の食事を見てるなんて、失礼じゃありません？」
吸血鬼に常識というものが通じない事をわかっていて言っているのだろうか。とても困惑した。
「そんなに私の事が気になっていたんですか？」
まるで楽しそうに、男はから情報を引き出すべく探るように話す彼女。
吸血鬼相手によくもこんなに呑気になれるものだと、思った。本当に普通の人間か疑わしくなる。
少なくともあの距離で男の視線に気づいていたとなると、一般の人間からは外れた存在だろう。
「お前は私に何故気づける？何者なんだ？」
「うーん、普通の女の子ですよ」
彼女はそれ以上自分の事を語らなかった。
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れん(プロフ) - タコさん» ありがとうございます！頑張ります！ (2020年5月25日 13時) (
レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
タコ - とっても面白いです。これからも頑張ってください！ (2020年5月24日 16時) (レス) id: 805d2b00fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こんぺいとー | 作成日時：2020年5月19日 23時
