7.夜風の会話 ページ8
「ただのお隣さんにそこまで話す必要はないでしょ？……ごちそうさま。」
もうお父さんが死んだことに関しては何も感じない。なのになんでそんな顔をするの？
「それじゃ、帰るね。」
一人、店を出る。
いつかはわかるだろうことは話した。特に話したくないことを除いて。どうせ知られるだろうし。
二人の泣きそうな悲しそうな顔を思い出す。けれど、首を振って何も考えないようにした。
「〜〜〜♪」
大好きなギターをかき鳴らしながら歌を重ねる。
私が私らしくいれる。
この時間だけはちゃんと呼吸ができる。息苦しくて胸がつかえそうになる現実もこの瞬間は忘れられる。
だからこの時間は必要不可欠で、音楽は私の体の一部なんだ。
ふと空を見上げると星が瞬いていていつのまにか夜が来ていた。三日月が優しく夜空を照らす。
ベランダに吹く夜風が心地いい。
だんだん現実へと意識を戻す。すると隣のベランダから紗夜がこっちを見ていた。
「……いつから見てたの？」
「ついさっきよ。」
おっといけない。素が出てる。
「すみません、近所迷惑でしたね。」
そのままベランダから逃げる。私の部屋へと戻るドアに手をかけた。
「待って！」
「………。」
「変わってないわね。ソラの音も演奏中のソラも。とても楽しそうに弾いてる。」
変わってない、か。
「……まだギター続けてるの？」
「ええ、もちろん。求めるレベルには達していないけれど。」
「今はどこを目指しているの。」
「もちろん誰にも負けない完璧な技術で最高の演奏をすることよ。……ギター以外何もないから。」
日菜に負けたくないから、か。相変わらずなんだね。
ひんやりした風が頬をなでた。
「……ギター以外に何もないなんて言わないでよ。まだ氷川さんには家族がいる。」
まだ紗夜には家族がいる。関係がどうであれ、まだ日菜との間には修復の余地がある。
一方、私はもう引き返せないところまで来てしまった。……本当に音楽しかないのは私。
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みずの(プロフ) - 何だかんだ言って夢主は紗夜さんのこと気にかけてるんですね。頑張れ夢主ちゃん！ (2020年4月15日 2時) (
レス) id: d74848b20e (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - みずのさん» これから紗夜との絡みも増やして行く予定ですのでお楽しみに！ (2020年4月10日 22時) (レス) id: e241165bdf (このIDを非表示/違反報告)
みずの(プロフ) - 紗夜さんもマギさんを見てたんですね！ (2020年4月10日 1時) (レス) id: d74848b20e (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - みずのさん» ありがとうございます！そう言っていただけると嬉しいです。 (2020年4月7日 12時) (レス) id: e241165bdf (このIDを非表示/違反報告)
みずの(プロフ) - すごい読みやすいし内容がもう好きです！ (2020年4月7日 0時) (レス) id: d74848b20e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：刹那 | 作成日時：2020年3月17日 22時
