宿題 ページ9
翌日。登校した私は普段通りそそくさと自分の席に着いた。誰とも挨拶は交わさない。気付かれないままがいい。
デンジくんはもう既に教室にいた。欠伸を噛み殺しながら、やっぱりどこか遠くを見ていた。
それから放課後までの時間は、昨日とほとんど変わらなかった。デンジくんはお昼は教室にいなかったけど、多分屋上に行っているんだろう。面倒だから私は絶対行かないけど。
「掃除、今日も二人だなー」
「そうだね。よろしく」
昨日と同じように、当番を任されている私たちは教室に戻って掃除をしていた。教室からは、また一人、二人とクラスメイトが減っていく。今日もまた、私と彼だけが教室に残された。
「……今日もこの後、時間いい?」
「おっ、昨日と同じカンジ?」
おどけてお金のハンドサインを見せながら話しかけると、デンジくんは同じ形を手で作って角度を変え、楽しそうにOKを示してくれた。嫌そうな素振りはない。他の女子に頼まれてるときみたいなちょっと虚ろな目ではなく、年相応で純朴な表情を引き出せた気がして、少しだけ優越感を覚えた。
「昨日みたいにだらだら喋ってるのもよかったけど、今日は宿題をやろう」
掃除を終えてデンジくんの隣の席にお邪魔すると、私から受け取った10円玉を弄んでいた彼は「えぇ〜!」と顔をしかめた。
「俺頭わりぃから、一緒にやるメリットとかなんも……」
「はい、デンジくん、プリント出して」
「ん」
不満げな彼の反応は無視する。一緒にできることなら、なんだっていいんだから。
「応用問題じゃなくて、今日授業でやったとこの確認だけだから大丈夫だよ」
「確認な〜……」
「あ、1問目から惜しい。綴りがちょっと違うかも」
「あああ! クッソ〜〜!!」
勉強ってやった方がいいと言われたからやって来たけど、家や学校で勉強をしていて楽しいと思ったことは一度もなかった。でも、こうやってデンジくんと話しながら宿題をやるのは、存外悪くない。
「そういや、おはぎの悪魔いなくなったんだな」
宿題のプリントを片付けて(先に終わった私がデンジくんに教えてばかりいたけど)雑談をしようとした矢先、不意にデンジくんがそう言った。
「本当だ。……チェンソーマンが倒してくれたのかもね?」
先生だか机の持ち主だかが消したんだろうなと思いつつ、そんなことを言ってみる。無論、デンジくんの気を引くため。
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めがね - とっても良い!!作品!!!です!!素敵な作品をありがとうございます。 (3月20日 0時) (レス) @page18 id: a861171d21 (このIDを非表示/違反報告)
awake - 好き (2月17日 21時) (レス) @page18 id: 8771cd27cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あきいろ | 作成日時:2023年9月2日 11時