検索窓
今日:3 hit、昨日:22 hit、合計:2,177 hit

宿題 ページ9

翌日。登校した私は普段通りそそくさと自分の席に着いた。誰とも挨拶は交わさない。気付かれないままがいい。

 デンジくんはもう既に教室にいた。欠伸を噛み殺しながら、やっぱりどこか遠くを見ていた。
 それから放課後までの時間は、昨日とほとんど変わらなかった。デンジくんはお昼は教室にいなかったけど、多分屋上に行っているんだろう。面倒だから私は絶対行かないけど。

「掃除、今日も二人だなー」
「そうだね。よろしく」

 昨日と同じように、当番を任されている私たちは教室に戻って掃除をしていた。教室からは、また一人、二人とクラスメイトが減っていく。今日もまた、私と彼だけが教室に残された。

「……今日もこの後、時間いい?」
「おっ、昨日と同じカンジ?」

 おどけてお金のハンドサインを見せながら話しかけると、デンジくんは同じ形を手で作って角度を変え、楽しそうにOKを示してくれた。嫌そうな素振りはない。他の女子に頼まれてるときみたいなちょっと虚ろな目ではなく、年相応で純朴な表情を引き出せた気がして、少しだけ優越感を覚えた。

「昨日みたいにだらだら喋ってるのもよかったけど、今日は宿題をやろう」

 掃除を終えてデンジくんの隣の席にお邪魔すると、私から受け取った10円玉を弄んでいた彼は「えぇ〜!」と顔をしかめた。

「俺頭わりぃから、一緒にやるメリットとかなんも……」
「はい、デンジくん、プリント出して」
「ん」

 不満げな彼の反応は無視する。一緒にできることなら、なんだっていいんだから。

「応用問題じゃなくて、今日授業でやったとこの確認だけだから大丈夫だよ」
「確認な〜……」
「あ、1問目から惜しい。綴りがちょっと違うかも」
「あああ! クッソ〜〜!!」

 勉強ってやった方がいいと言われたからやって来たけど、家や学校で勉強をしていて楽しいと思ったことは一度もなかった。でも、こうやってデンジくんと話しながら宿題をやるのは、存外悪くない。

「そういや、おはぎの悪魔いなくなったんだな」

 宿題のプリントを片付けて(先に終わった私がデンジくんに教えてばかりいたけど)雑談をしようとした矢先、不意にデンジくんがそう言った。

「本当だ。……チェンソーマンが倒してくれたのかもね?」

 先生だか机の持ち主だかが消したんだろうなと思いつつ、そんなことを言ってみる。無論、デンジくんの気を引くため。

ここだけの話→←不思議



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (22 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
11人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

めがね - とっても良い!!作品!!!です!!素敵な作品をありがとうございます。 (3月20日 0時) (レス) @page18 id: a861171d21 (このIDを非表示/違反報告)
awake - 好き (2月17日 21時) (レス) @page18 id: 8771cd27cf (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あきいろ | 作成日時:2023年9月2日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。