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時間 ページ6

しばらくぽかんとしていたデンジくんだったが、やがて手元に視線を落として作業を再開した。

「いーぜ、金くれんなら」
「そ、っか……じゃあ、この後お願いします」
「おうよ」

 淡々とした答えが返ってくる。もしかしたら、拒否されるかもしれないと思っていたけど、そんなことなかったのだ。
 受け入れてもらえはしたけど、結局私はこうして申し出たことをちょっぴり後悔した。よくないと知りつつ、いつも彼を頤使している女の子達とやっていることは変わらない。Aもあいつらと同じなんだなって、デンジくんに思われてしまうのが怖かった。

 でも、私もデンジくんの助けになりたいって思っちゃったんだからしょうがない。嫌われちゃっても、どうせまた独りに戻るだけだ。
 自分で自分にそう言い聞かせて、何も考えないように教室掃除をする手を動かした。


「っしゃあ! キレーになったぜ」
「うん、お疲れさま」

 机を運び終えて手を洗えば、今日の掃除当番も完遂だ。
 綺麗になった教室で自分の席に置いてある鞄をひっ掴むと、私は財布を取り出してデンジくんの元へ向かった。
 ふたつ分、机を通り過ぎると、デンジくんの座席に着いた。二人しかいない教室は、やっぱり静かだ。

「じゃあこれ、まずお金……ご査収ください」
「おー」

 いつもクラスメイトの子がやっているみたいに10円玉を掌に載せて、デンジくんの前に差し出す。彼は相変わらず無気力そうなまま、片手でそれを受け取った。
 何かいけないことをしているようで、少しドキドキする。

「……あっ、ちょ、ちょっと待って!」
「あぁ?」

 いきなりイスになるために四つん這いになろうとしたデンジくんを制止するよう、私は大きな声で呼び止めた。

「イスに! なってほしいんじゃないの」
「えぇ〜……? じゃあお前何がしてぇの?」

 ……考えてなかった。制服のスカートの裾をぎゅっと掴んで「えっと」と言葉に詰まる。

「デンジくんの時間を――貰いたいの」
「時間?」
「隣の席、お借りします」

 綺麗になったばかりの教室の床を蹴って、私は彼の隣の席に座った。

「???」

 何がしたいのか分からない、といった風に、デンジくんの視線が突き刺さる。

おはぎの悪魔→←掃除当番



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めがね - とっても良い!!作品!!!です!!素敵な作品をありがとうございます。 (3月20日 0時) (レス) @page18 id: a861171d21 (このIDを非表示/違反報告)
awake - 好き (2月17日 21時) (レス) @page18 id: 8771cd27cf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あきいろ | 作成日時:2023年9月2日 11時

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