チェンソーマン ページ2
勘違いであってください……と、顔の向きはそのままで彼を一瞥する。だめだ、今の完全に目合ったよ。合っちゃったよ。
ドキドキと胸が高鳴り、冷や汗が服の内側を伝っていく感覚がした。急いでお昼を口に詰め込み、お水を飲んで、トイレに逃げこんだ。きまりが悪かった。
「なあ、アンタさー」
放課後、おわった。
いつもだったらそそくさと帰り支度をして、学校イチなんじゃないかって速さで帰路に着く私だが、今週は掃除当番だった。
やけに人が少ないなって思っていると、別に当番ではないはずの彼がほうきで床に落ちたゴミを集めるのを手伝ってくれた。イスにされてるときみたいに、お金をもらって当番を代わってもらったらしい。
この教室には今彼と私以外に人はいないので、彼の言う「アンタ」は私なのだろう。
急に声をかけられて大げさに肩を跳ねさせた私を特に気にするでもなく、デンジくんは言葉を続けた。
「チェンソーマンって好き?」
予期せぬ問いかけに、思わず床を掃く手を止めてしまう。チェンソーマンっていうと、あれだ。危険な悪魔をやっつけて人間を守ってくれる、みんなのヒーロー。学校にも、チェンソーマンに憧れてるっていう人は少なくない。
「うーん……。デンジくんは好きなの?」
「俺? 俺ぁチェンソーマンめーっちゃ好き! スゲー強くてカッケーよな! モッテモテだし!」
私の記憶違いじゃなければ、彼とは初めて話すことになる。他の人にはよく「デンジ」と呼ばれているから私もそう呼んでしまったけど、馴れ馴れしくはなかっただろうか。嫌な顔ひとつせず答えてくれる彼に、とりあえずほっとして胸を撫で下ろす。
「Aはチェンソーマン好き?」
期待に満ちた眼差しを向けられ、ひるんでしまう。というか私の名前知ってたんだ。
学校で雑談なんかをするのが情けないことに久しぶりだったので、吃りながらもなんとか言葉をひねりだす。
「ちょ、ちょっとコワイ……かも」
「えぇー、なんでェ!?」
「わっ!?」
テレビで活躍が報道されていたのを思い出しながら正直に答える。するとデンジくんは驚愕しながら、まるでつんのめるみたいに勢いよくこちらへ近づいてきた。
だって正体がよく分かんないし、悪魔との戦闘に巻き込まれて人が亡くなっちゃうこととかも、残念ながらある。それに、テレビの液晶越しに見た彼の血に塗れた姿が、頭から離れてくれないのだ。
11人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めがね - とっても良い!!作品!!!です!!素敵な作品をありがとうございます。 (3月20日 0時) (レス) @page18 id: a861171d21 (このIDを非表示/違反報告)
awake - 好き (2月17日 21時) (レス) @page18 id: 8771cd27cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あきいろ | 作成日時:2023年9月2日 11時